山口規子さんは、世界中を旅しながら、ジャンルを横断した素敵な写真を撮り続けるフォトグラファー。風景、人物、料理……、地球上のさまざまな場所でこれまで撮影してきた作品をサンプルとして使いながら、CREA WEB読者に旅写真のノウハウを分かりやすくお伝えします!

vol.5 ニュージーランド

この上なく自然が綺麗な国で山写真のノウハウを学ぶ

マウントクック国立公園。雲が山の稜線を滑るように動き、刻々と表情を変えていく。右奥に見えるマウントクックの山頂は雲がかかっていることが多く、年間でも数日しか望むことができないという。

 夏休みも取らずまだ働いている人、これから休暇を取る人、休暇が終わって現実に戻り、がっかりしている人など様々な気持ちが交差する8月後半、これからは暑すぎず寒すぎず、山登りにはちょうどいい季節。

 学生時代、ワンダーフォーゲル部に所属し、夏は北アルプスの槍ヶ岳山荘でアルバイトをしていた私にとって、山といえばニュージーランド!

 映画『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのロケ地、飛べない鳥キウイ、有名なラグビー代表チームのオールブラックス、羊の数が人間の数より多い国などイメージは尽きないが、私は、山、海、滝、川、湖、森、氷河など総合的な自然が一番綺麗な国だと思う。

エレファントロックに放牧された羊たち。カメラを向けると距離を確認してから逃げていく。愛くるしい子羊たちの表情に思わずシャッターを切る。

 ここでお間違えのないように伝えておくが、今、南半球は真冬である。このコラムを見て、思い立ったが吉日、明日エアーチケット買ってニュージーランドへハイキングに行こう! なんて思わないでね。現地は真冬で、山登り天国ではなくスキー天国になっているから。

 じゃあ、なんで今頃紹介するのよ! とブーイングの嵐の前に言い訳。映画『ホビット』最新作を観たら再びニュージーランドに行きたくなってしまったのよ。というわけで今回はニュージーランドで撮る山写真のコツをお教えしよう。

 ここでは「山岳写真」といえるほど大それたことは教えられないので、敢えて「山写真」といっておこう。

朝陽を浴びて赤く染まっていくマウントクックは標高3754メートル。雲の帽子を被るような表情を見せてくれた。

2015.08.23(日)
文・撮影=山口規子