CREA WEBの好評連載コラム「世界極楽ビーチ百景」で海外の至福ビーチ事情をレポートし続けているビーチライター・古関千恵子さんが、特別篇として国内の厳選ビーチをおすすめします。三浦、伊豆、房総といった首都圏からのアクセスに優れた場所から、沖縄の離島や小笠原といったスペシャルな南国まで、日本が誇る10の絶品ビーチをご紹介!

#008 黒崎の鼻(神奈川県)

畑の一本道を走り、藪の合間の小道を降りた先に……

国道から曲がると、日常から切り離されたようなのどかな光景に。

 都心から2時間圏内で、まるで海外にいるかのような錯覚を覚える三浦の「黒崎の鼻」。なぜ外国っぽいのかというと、アプローチからしてスケールが大きく、心躍る道行なのです。

 国道134号線から海方向へ曲がると、広がるのは見渡すかぎりの畑。キャベツやネギ、ニンジン、夏ならばスイカやトウモロコシなど、季節折々の作物が広大な畑で育てられています。その畑の真ん中の一本道を走るのですが、たまに農作業を終えた軽トラやトラクターとすれ違うことも。海に向かってしばらく走ると、天気がいい日は右手に富士山を望みます。

草藪の中の一本道をビーチへと駆け下ります。

 そして一本道の終点に到着。

 ここからがアドベンチャーの第2幕です。

 背丈ほどの笹やススキの草藪の合間に走った幅1メートルほどの未舗装の小道を、海に向かって降りて行くのです。草藪に覆われて視界は足元の小道のみ、しかも急こう配。悪い足元と海へと急ぐ気持ちとがあいまって、つんのめりそう。不確かな足元に気をつけながら進むと、パッと景色が開けて、岩礁の張り出した小さな入り江が出現します。

「一体、どこにいるんだろう?」と思ってしまう、人工物が見えないビーチの風景。

 さらに小道を下って行くと、背後は緑の小高い丘(季節によってはススキの枯れ葉色)に守られ、角度によっては人工物が一切見えない、まるで外界をシャットダウンしたようなビーチに行きつきます。

 ふと一体、ここはどこ? いつの時代? と自問したくなる風景です。

2015.08.15(土)
文・撮影=古関千恵子