能楽堂という異空間

 能楽堂というのはお能の専用劇場で、大阪市内には意外にも多くの能楽堂があります。

 本来は屋外に建っているものですが、現在の都市部ではその殆どは屋内です。外観はビルですが中に入ると能舞台という全くの異空間が広がっているのです。

 中でも私がお稽古に通っていた山本能楽堂は大変趣のある能楽堂です。平成18年、国の登録文化財に指定されました。

 大阪城にほど近いビジネス街の一角、本当に能楽堂なんてあるのだろうか。先輩に連れられてはじめて能舞台の扉を開けた瞬間、目の前に広がる別世界に驚きを隠すことはできませんでした。

 能舞台の正面の鏡板には、芸能の神さんが宿っておられるという立派な老松が力強く描かれています。舞台が始まると神さんが喜び、能役者をおおらかに見守り、包み込むのを感じます。

 夜、お稽古を終えて誰もいない消灯後のお舞台を見たとき、威厳に満ちた静けさに息を呑みました。

 山本能楽堂では初心者向けの楽しい催しもたくさん企画されていますので、是非ホームページで公演情報を検索してみて下さい。

山本能楽堂ホームページより

山本能楽堂
URL http://www.noh-theater.com/

大阪の能楽師の夏

 能楽師にはシテ方、ワキ方、狂言方、囃子方(笛方、小鼓、大鼓方、太鼓方)があり、それぞれに流派があります。プロの能楽師は能楽協会に属しています。能楽協会は東京、北陸、名古屋、京都、大阪、九州の各支部に分かれています。

 毎日舞台の場所も時間も内容も違えば、舞台を共にするメンバーも違いますので日々のスケジュール管理が大変です。

 能楽師の夏はとにかく忙しい。天神祭の『能船』(7月25日)に始まり、伝統ある生國魂神社の『大阪薪能』(8月11、12日)、シテ方は装束の『虫干し』、能楽師のお囃子の研究会である『三島教室』(非公開)、夏休みの子供達の能楽連続講座、修業中の若手能楽師による『東西合同研究発表会』(8月25日)と目白押しです。

 その合間にお社中さんのお稽古や、それぞれに依頼があった公演が入ってきます。

2015.08.01(土)
文・撮影=中田文花