オンナ目線でカッコイイことをやりきっている

伊藤 ところでここ数年のMAXはキレています。今年でデビュー20周年、アラフォー3人組は今のアイドルブームなんかそっちのけで、わが道をゆく、という感じでカッコイイ。女が強い時代の代表選手として注目しています。

山口 そうですね。男に媚びる感じが全くなく、オンナ目線でカッコイイことをやりきっている印象です。結果、たぶん、男性ファンにも支持されているんでしょうね?

伊藤 ちゃんと支持派と非支持派に分かれていると思います。賛否両論ってことは男性からも“気になってしまう存在”という証拠でしょうね。曲の内容的には“ガールズ・アンセム”という感じで、日本版「SEX and the CITY」を表現しようとしていて面白い。歌詞も女子の赤裸々トークとヘンテコな英語がいい感じにMAX節になっています。

山口 そうですね。Jポップって、いろんな要素をごちゃ混ぜにして、「歌謡」という軸だけ残すという形で発展してきていると思うのですが、そういう意味でJポップらしい作品だと思いました。この歌詞をどう「妄想分析」するんですか?

伊藤 三軒茶屋の狭い路地裏にあるBAR、カウンターで女が独りで飲んでいる。いわゆる“いい女”だけど、男を寄せ付けないオーラというか、ワイルドさがある。ヘタなメタファーだけど、和顔の土屋アンナだ。

 こっちは仕事場の心無い送別会を居酒屋で全うしたあと、いつもの男子トリオで2軒目に流れついた。2人はもうかなり酔っているし、会話はいつものリアリティのない夢みがちな未来予想図。今年こそ今の会社を辞めて起業するとか……。きっとオレもあれくらい酔っているし、いつもだったら起業レースに参戦しているんだけど今夜はなんだか……だ。左耳だけで彼らの話をライドしながら、カウンターの女を眺める。というかこの女、かなり気になるし、エロい気分にさせられる。

 チェーンスモーキング、レッドブルとウォッカをまぜたカクテル、高速で操作されるiPhone。たまに女友達からと思われる電話に屈託のない笑顔で応える、しゃべる言葉はキタナイ。いや、それをキタナイと思うオレはオッサンなのか? 女はいくつなんだろう? よく見ると女の目じりにはそれなりの時間を生きた証がみえる。オレとそんなに変わらないかもしれない。

 観察を続けていると、ふと女がiPhoneから目を離し、オレのほうを見る。そして笑顔をみせる、ムチャクチャ可愛くて、そしてディープな笑顔。オレの心臓はドンッと鳴った。ハートを射抜かれるとはこのことだ、マンガか! と思うくらいズバッときた。だけど、それをきっかけにオレはリアリティのない男たちの顔に、夢みがちな未来予想に戻る。ハプニングを期待していた自分を鼻で笑う。結局、敵わないくらいの夢が心地いいのだ、と思いながら今夜7杯目のレモンハイを注文した。

山口 男目線で受けてきましたね(笑)。

MAX「#SELFIE ~ONNA Now~」
エイベックス・エンタテインメント 2015年7月22日発売
[CD+DVD]1,800円、[CD]1,200円(税抜)
■ザ・チェインスモーカーズによるオリジナル「#セルフィー」は、歌詞のないインストゥルメンタルだが、ももいろクローバーZなどの作品で知られるヒャダインこと前山田健一が日本語詞とメロディーをのせ、MAXスタイルに仕立て上げた。
■「#SELFIE ~ONNA Now~」
作詞・作曲/Andrew Taggart 日本語詞・曲/前山田健一 編曲/守屋友晴(WORLD SKETCH)
■オフィシャルサイトURL http://avex.jp/max/

【動画サイト】
「#SELFIE ~ONNA Now~」

URL https://www.youtube.com/watch?v=ME1KnpaNq60

2015.07.17(金)
文=山口哲一、伊藤涼