Magnificent View #656
マテーラの洞窟住居(イタリア)

(C) Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 切り立った崖を削り取り造った住居が並ぶ、イタリア南部の街マテーラ。密集する住居の数は4000以上にもなる。

 いかにも暮らしにくそうなこの場所に人が定住し始めたのは、8世紀頃のこと。イスラム勢力の迫害から逃れてきたキリスト教の修道士が、新石器時代からある洞窟に移り住んだのが始まりといわれている。修道士たちは洞窟の一部を聖堂に利用し、やがてその周りに農民が移り住み、街へと発展したのだという。

 街の人口はしだいに増え、16世紀には、洞窟の入り口に石を積み、建て増しをした住居まで登場。岩壁の住居が何層にも重なる、ユニークな景観の都市が形成された。だが、20世紀に入ると、マテーラは経済発展から取り残され、衰退。ついにはイタリア政府が全住民を新市街に移住させ、街はゴーストタウン化してしまった。

 再び人が暮らすようになったのは、第二次大戦後のこと。歴史的遺産としての価値が再認識され、政府により再開発が進み、1993年には世界遺産にも登録。現在、洞窟住居は住宅やレストラン、ホテルなどに再利用され、人気の旅行先となっている。

Column

今日の絶景

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2015.07.18(土)
文=芹澤和美