ガリフナ族が暮らす村で、絶品バナナスープに舌鼓

港町テラ。かつて積荷を運んだ線路跡には、釣り人がたくさん。

 ホンジュラスはかつて、「バナナ・リパブリック(バナナ共和国)」という通称で呼ばれていたことがある。いかにもトロピカルで陽気なニックネームだが、実際は、外国資本にコントロールされた輸出業に依存することで、裕福な支配層による独裁体制や政情不安に陥った国のことを言う屈辱的な意味がある。ラ・セイバの西にある港町テラは、バナナ生産会社の本拠地として発展した街だ。

海では、家族が網を片手に魚を獲っていた。

 そんなテラの近郊にも、ガリフナ族のコミュニティーがある。トリウンフォ・デ・ラ・クルスという、昔ながらの生活を続けている村だ。ガリフナ族は、スポーツに長け、この村からも、国際的に活躍する選手を多く輩出しているという。ちなみに、ガリフナの言語や舞踏、音楽はユネスコの無形文化遺産にも登録されている。

お邪魔したガリフナ族のお宅。雑貨店も兼ねて、親子3世帯で暮らす6人家族。
庭にいたのは、豚と馬。豚は放牧されていて、広い庭を自由に闊歩していた。

 訪ねたお宅でお母さんがご馳走してくれたのは、マチュカ(バナナのスープ)。バナナは日本で食べるものとは違って、揚げたり焼いたりなどして料理に使われる、プランテンバナナだ。杵でついて潰したバナナのスープに、揚げた魚介と絞りたてのココナッツミルクを入れて作る。仕上がりは、とろりとした食感で、甘味と魚の出汁がほどよく混ざり、とても風味が豊か。

スープと一緒に出てきたのは、ペスカード・フリート(魚のフライ)とプラタノ・フリート(バナナのフライ)、コングリ(豆入りご飯)。香ばしくておいしい!

 ここに暮らすガリフナ族の人たちは、電化製品を使わない。洗濯板のような調理道具を使っておろすココナッツミルクはとてもジューシーだし、バナナはいつでも庭になっているから新鮮。経済的に電化製品を購入できないという事情もあるのだろうが、彼らの食生活はとても豊かに見えた。

ココナッツの実はおろして使う。素材はいつもフレッシュだ。

 1日をこの村で過ごし、仲良くなった子どもたちとのお別れにちょっと後ろ髪を引かれながら、テラのホテルへ。私たちが乗った車が見えなくなるまで手をふってくれた男の子は、もう立派な青年になっていることだろう。もしかしたらサッカー選手になっているかもしれない。活躍しているといいな、と、今もときどき思い出している。

見知らぬ外国人を興味津々で見ていた男の子。

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

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2015.07.14(火)
文・撮影=芹澤和美