日本で最も古い国立公園のひとつが、瀬戸内海だ。最も広い国立公園も、やはり瀬戸内海。広域にわたって美しい景観が広がるこの地をフェラーリ・カリフォルニアTで駆け抜けた。

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» 第2回 栄華の名残をとどめる港町・鞆の浦

思わず延泊したくなる、瀬戸内海の絶景と極上の料理

開放感にあふれたザ・デッキ。明るい昼間もいいが、焚き火の炎が上がる夜間の雰囲気もいい。

 フェラーリで宿に向かいながら、これ以上に贅沢な旅はあるのかと考える。けれどもベラビスタ境ガ浜を訪ねて、また別の世界があることを知る。この宿にはマリーナが併設されており、ヨットやクルーザーで訪れる宿泊客もいるのだという。

 このリゾートホテルの歴史を知れば、それも納得できる。ベラビスタ境ガ浜はそもそも、この地で造船業を営む常石造船の迎賓館として建てられたのだ。世界中から海運会社の社長や船主が家族とともに訪れ、自分の船が建造される過程を見守ったのが始まり。そして2007年に大きくリニューアルし、リゾートホテルとして新たなスタートを切る。

ザ・ロビーと名付けられたスペースではお茶やコーヒーのほか、ピンチョスも楽しむことができる。

 このホテルの特徴を尋ねると、スタッフのひとりが「多島美です」と自信たっぷりに言い切った。確かに、瀬戸内海と島々を見下ろすザ・デッキからの眺めといい、部屋やスパからのオーシャンビューといい、この立地でしか得られないものだ。ちなみにベラビスタとは、イタリア語で「美しい眺め」という意味である。

最上階の中央に設けられたパノラマスイートは、100平方メートルの広さを誇る。

 眺めるだけでなく、瀬戸内海を味わい尽くすアクティビティも用意される。無人島へのバーベキューツアー、ランチ付きのクルージング、そしてフィッシング。なかでも釣って楽しく、食べて美味しい鯛釣りは、いちばんのおすすめだという。

 瀬戸内の海で遊び、地産地消をコンセプトにした料理を堪能すると、もう一泊したくなった。何カ月も飽きずに滞在した船主たちがいたというのも納得できる。

天然の尾道温泉の湯を引いたスパも人気。絶景の露天風呂では、時が経つのを忘れる。

撮影=柏田芳敬
文=サトータケシ