Magnificent View #637
ダラダー・マーリガーワ寺院(スリランカ)

(C) R. Ian Lloyd / Masterfile / amanaimages

 スリランカ中部の都市キャンディにあるこの寺院は、仏陀の犬歯を祀っていることで知られている。通称は「仏歯寺」。現地の言葉で「ダラダー」は仏歯、「マーリガーワ」は宮殿を意味する。

 スリランカでは、仏の歯は王権の象徴。ポルトガルの侵入やヒンドゥー教徒との争いの際、王たちは都を捨てても仏歯だけは手放さなかったという逸話もあるほど。王の証でもある仏歯は王都が変わるたびに移動し、1603年以降、この寺に納められることになった。

 仏歯が保管されているのは、宝石をあしらい黄金に輝く七重の箱の中。1日に3回、10分間ずつ聖堂の緞帳が上がり、一般の参拝者の前に箱が披露される。仏歯は8万4000回の説教に直接触れた尊いもので、黄金の箱に祈りを捧げると、願い事が叶うのだとか。

 その尊い仏歯が年に一度だけ、寺院を離れることがある。8月に行われるペラヘラ祭の時期だ。ご覧のように電飾で飾られた寺院から、象の背中に乗った仏歯が現れ、街を練り歩く。

Column

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2015.06.29(月)
文=芹澤和美