マレー半島とボルネオ島北部にまたがる常夏の国、マレーシア。実はこの国、知る人ぞ知る美食の国なのです。そこでこの連載では、マレーシアの“おいしいごはん”のとりこになった人たちが集う「マレーシアごはんの会」より、おいしいマレーシア情報をお届け。多様な文化が融け合い、食べた人みんなを笑顔にする、とっておきのマレーシアごはんに出会えますよ。

イスラムの世界でいちばん大事な「ラマダン」という“行”

 多民族国家マレーシア。民族それぞれが、自分たちの宗教や食習慣を大切に守りながら暮らしている国。そのため、多彩な料理とディープな食文化が体験できる食の王国。

 様々な民族のなかで、いちばん数が多いのがマレー系民族。彼らはイスラム教を信仰しています。今や世界人口の約1/4を占めるともいわれるイスラムの人々。マレーシアでは、あらゆる場所で、イスラムの食文化に触れ、味わうことができます。

マレー系民族の屋台「ナシ・チャンプルー」。“ハラル”とよばれるイスラム教のルールにそって、豚肉・アルコールは使用していない。

 イスラム教には「豚を食べない」「アルコールを飲まない」など、“ハラル”とよばれる食のルールがあります。そして、イスラム教徒にとって1年でいちばん大事な時期が「ラマダン」。30日間、日の出から日没まで食事や水分を摂取しない断食月です。今回は、マレーシアでラマダンを体験して感じたこと、またこの時期ならではの食の楽しみ方をお伝えしましょう。

日没後の食事で最初に食べるのはデイツ(ナツメヤシ)という木の実。栄養価が高く、神が与えた食事、といわれている。

 イスラム暦の第9番目の月にあたるラマダン。世界中のイスラム教徒がいっせいに、日が出ている間の飲食、喫煙を絶ちます。時間はその人が暮らしている国の日の出・日の入りに合わせるので、断食の長さは国によってまちまちです。

 敬虔な人は自分の唾でさえも飲み込みません。この時期、道路に唾を吐いている人をよく見かけるのはこのため。幼い子どもや妊婦は“行”を免除され、病人・旅行中の人・生理中の女性は後日に猶予が与えられます。

ラマダンの時期は、夕方から食事を販売する露店が次々に現れ、買い物をする人で大賑わい。

 さて、ラマダンは食事を制限することで、食べることとは無縁の時期と思う人も多いでしょう。ところがどっこい、実際はそうではないのです。ラマダンの時期は、ごはんに心を集中させ、ごはんを慈しむ期間。さらに日没後の貴重な食事のために、趣向を凝らした絶品ごはんが屋台に並ぶため、おいしいマレーシア料理に出会えるチャンスでもあるのです。

 お弁当、総菜、スイーツ、スナック、飲み物。日没後すぐに食べられるよう、持ち帰り用にパッキングされた料理が屋台にずらりと並ぶ姿は圧巻です。

2015.06.28(日)
文=古川 音
撮影=三浦奈穂子、古川 音