時間のやりくりに苦労して膀胱炎になった!

公式上映後に取材に応じる『海街diary』チーム。左から、広瀬すず、長澤まさみ、綾瀬はるか、夏帆、是枝裕和監督。

 今年のカンヌは本当にクレージーだった。5月13日から24日までの12日間、良くも悪くも、クレージーで、とにかく忙しく、そして最後の結果にもびっくりして、思わずガチョーンだった。映画に並ぶわ、会見に並ぶわ、さらに取材から取材でトイレに行く暇もなかなかなく、ようやく行ってみたら大行列で、マダムアヤコったら膀胱炎にもなっちゃったし。何が辛いって、これが一番辛かったわけだが。カンヌよ、もっとトイレを増やしてくれ!

『あん』のスタッフおよびキャスト。左から、原作者のドリアン助川、内田伽羅、河瀬直美監督、永瀬正敏、樹木希林。河瀬監督のヘソ出しルックに、樹木希林が「女優より女優」と突っ込みを入れていた。

 という愚痴から始まっちゃいましたが、なんでそんなに忙しかったかと言えば、日本作品が多く上映され、さらに日本人出演作がコンペに入っていたことから、取材が増えていたわけ。

 この12日間に、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、樹木希林、永瀬正敏、深津絵里、浅野忠信、津川雅彦、瀬戸朝香、そして台湾の侯孝賢監督の『黒衣の刺客』に出演している妻夫木聡、と名だたる俳優陣がやってきていたのだ。もちろん『岸辺の旅』で「ある視点」部門監督賞を受賞した黒沢清ら、監督たちも。さらには、くまモンまで!

妻夫木聡と侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督。『黒衣の刺客』はコンペティション部門で見事、監督賞に輝いた。

 まず、映画祭2日目となる5月14日にはコンペティション部門の1発目として、是枝裕和監督の『海街diary』が上映され、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずがレッドカーペットに登場。さらに同じ日に、「ある視点」部門のオープニングを河瀬直美監督の『あん』が飾り、樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、ドリアン助川もレッドカーペットに。

熊本県をアピールするKUMAMON DAYで、達者なダンスを5曲も披露したくまモン。外国人女性たちにも大人気。くまモン出演のショートムービーも上映していた。

 それぞれ会見やら囲み取材もあって、さらにその間に『マッドマックス 怒りのデスロード』でシャーリーズ・セロンとトム・ハーディもやって来る! シャーリーズの婚約者ショーン・ペンもついてきてるよ! と、もう走り回って取材をしていたけど、素朴な疑問が。「いつ映画観るんだ、オレ!? もとい、マダム!」。

 日本映画がカンヌで上映されるのはやっぱり嬉しいものなのだが、上映が重なって、日本では滅多に上映されない監督の作品や、未知の才能との出会いを犠牲にしてしまうことも。カンヌに来ている第一の意義はそこにあるのに。それでも、なんとか観ようとして深夜の上映に駆けつけたり、時間のやりくりが大変で、膀胱炎にもなるわけである。しつこいようだが。

2015.06.16(火)
文・撮影=石津文子