音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
長渕剛「富士の国」

15分近い楽曲のライブ音源をシングルとしてリリース

伊藤 今回は長渕剛の「富士の国」、なんとライブ音源のシングルカットです。

山口 「来月、流行るJポップ」というタイトルで、ヒット曲を予測しようという試みの本コラムにしては、大ベテランを取り上げてきましたね。これまで新たな注目株というタイプのアーティストが多かったですが、何故、長渕剛を?

伊藤 “新たな注目株”はそれで面白いんだけど、長渕剛のようにベテランなのに勢いを感じる、新しい試みをしようとしてるアーティストを見た時に無視できない。選曲する側としても、上り調子の若手のアーティストを取り上げるより、ベテランを取り上げる方がチャレンジングだし、その分の重みを感じますからね。今回は単純にリリース情報を眺めているときに、長渕剛がいちばん引っ掛かったんです。それにこのリリース内容と今後のイベント、音楽業界人としては気になる内容ですよ。

山口 15分近い大作で、ライブバージョンというのは、シングル曲の常識を超えていますね。

伊藤 さすがです(笑)。なんでわざわざライブ音源をCDで、しかもシングルでリリースするかというと、2015年8月22日の富士山ライブへむけて長渕信者へのメッセージですよね。「お前ら、忘れちまってないか? 俺たち日本人の魂を、みんなで叫ぼうぜ!!」って感じですね。

山口 富士山のふもとでの10万人ライブの話は聞いています。オールナイトライブを1人で歌うってすごいことですよね。

伊藤 超人です(笑)。長渕剛との出逢いはテレビドラマ「家族ゲーム」でしたね。2013年に嵐の櫻井翔主演でやはりテレビドラマとして復活していたけど、内容は時代を反映して随分変わっていた。長渕剛が演じるヒョロッとした長髪の暴力家庭教師がコミカルに描かれていて、なんとも言えず魅力的に見えた。長渕剛が歌った主題歌「GOOD-BYE青春」も印象的で、子供ながらにラジカセで録音して歌を憶えましたよ(笑)。

山口 実は僕は、ファーストアルバム『風は南から』のレコードは持っていました。今も実家にはあるはずですよ。優しいラブソングが好きでした。

2015.06.13(土)
文=山口哲一、伊藤涼