旅館道 その2
「鮮烈な合組体験でお茶の世界の虜に」

一般には、ブレンド(合組)された茶葉を飲む。

 「界 遠州」でのお茶の世界はまだまだこれから。まず、私たちが飲んでいる日本茶は、たいてい品種茶と呼ばれるお茶をブレンドして作っており、これを合組という。コーヒーの豆が、モカやキリマンジャロのように単品があって、それをブレンドして飲むのと同じ。

 品種茶のなかで代表的な「やぶきた」はその名が知られているが、「やまかい」「こうしゅん」「かなやみどり」などは、聞いたことがないという人も多いのでは? お茶は、品種名ではなく、「天竜」「本山」といった産地名で呼ばれることが多いからだ。さらに、20世紀後半に生み出された茶葉の「深蒸し」や、水出しかお湯出しかなどによっても味が驚くほど異なるのだ。

眺めのよいトラベルライブラリーは、ゲスト誰もが使えるスペース。

 館内イベントとして宿泊ゲストなら誰でも参加できるのが「お茶三煎」(要予約)。ちょっとしたお茶菓子や本もあって浜名湖を眺めながらゆっくりとできる「トラベルライブラリー」で開催される。「界 遠州」オリジナルのブレンド茶葉「爽華」を使って、同じ茶葉でお湯の温度や時間など入れ方を変えて味わうもの。

 ここで、上手に入れれば、お茶はこんなにもおいしいということに目覚めたら、「ブレンド茶」という茶葉の差を味わう有料イベント(1日2組限定ブレンド茶体験付プラン/ウェブ申込専用)に参加してみるとよい。

左:茶葉をまず小さな器に入れて水を注ぎ、葉が開くのを待つ。
右:水出ししたお茶をそれぞれ急須に移す。

 これは、品種茶の味が最もよく分かるという水出しで5種のお茶を味わい、さらにその中から自分の好きな品種2種を選んで、オリジナルにブレンド(合組)して味わうというもの。最初に出たのは、水出しの「やぶきた」。浅い水出し茶を味わう茶器に、水を2回に分けて注ぐが、茶葉が開くまでは1分ぐらい。それをおちょこのような小さな器に漉し出していただく。

 一口飲んで驚いた。これはお茶というより出汁!? と思うほど、とろみを感じるぐらいに濃厚。そして喉の奥で深みのある茶葉の味がゆっくりと広がる。

なかなか普通では味わえない品種茶のいろいろ。

 水出しで品種茶の特長を味わった後、好きなブレンドを決める。私は、甘い味わいで女性に人気という「こうしゅん」と、濃厚な味にノックアウトされた「やぶきた」を1対1でお願いした。口当たり、喉越しよく、後で「やぶきた」の深い味わいが残るというなかなかの味わい。これをうま味の出る1椀目、苦味の2椀目、渋味の3椀目と3回に分けていただく。最後に明治4年から続く菓子舗「巌邑堂」のコクのある餡が入った和菓子が出て来る。

左:お茶を入れて下さった土井さんは、九州出身で、ここに来て3年目。お茶の世界に目覚めて、今は地元九州の嬉野茶もよく試しているという。
右:ブレンドの際は茶葉の分量をきちんと量る。

 お茶ごとのお湯の適温や、入れ方、器の温め方などのお作法も教えてもらいながら、お茶の甘さや苦味、爽やかさや濃厚さ、さらにうま味などの味の違いや香りの違いなどが実感できる新鮮な体験だ。

2015.06.13(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=石川啓次