7月にイギリスで新作のレコーディングを終えてすぐ、フランスのノルマンディ地方で行われた友人の結婚式に参加しました。私にとっては親戚の結婚式に参加するような心持ち。というのも、新婦は私が十数年前のパリ留学時代にお世話になったホームステイ先のお嬢さんだからです。

休日にマドリッドから車で45分のチンチョンへ。美しい街!

 結婚式は教会で、その後のカクテルパーティと夕食会は別荘のお庭にて、という映画の世界のような光景が目の前に広がりました。新婦の彼女はアートスクールを卒業し、ファッション界で仕事をしている、生活スタイルもおしゃれな人。どんなドレスを選ぶのか楽しみにしていたところ、ジバンシイのとてもシンプルなドレスで、メイクもほぼいつもと同じ、ロングの髪もまとめずに、少し毛先を巻いただけ。ベールも顔を覆わずに後ろに着けるという、どこまでも自然なスタイルで、これは日本の結婚式の感覚に慣れていると、そうは真似できないものだなあ、と思いました。口紅も付けていなかったのには、びっくり!

友人の結婚式翌日。出席者たちが草原でランチ。さながら、マネの有名な絵画『草上の昼食』です!

 彼女のお母さんは日本の方ですが、当日、自分の化粧をさっと終えると、お母さんの化粧をしてあげていました。素敵な愛情表現。そばで見ていて心が温まりました。そんな彼女のメイクアップが結婚式の一日すべてを物語っています。カクテルパーティでも夕食会でも日本の披露宴のようなイベントはなく、人が集まり、ともに祝い、話し、食べ、最後は音楽に合わせて踊るだけ。すべてがシンプルで、とても素敵でした。

 さらに私が気に入った時間が「宴のあと」。結婚式の出席者はほとんど、その街に宿泊して、翌日の12時からまた皆で集まって昨夜行われた夕食会と同じテントの中でランチをしたのです。終わると、森に続いている広いお庭で布を広げてお話をはじめ、ある人たちはバドミントンをしたり。私はその光景を家の2階から見ていたのですが、まるでマネの『草上の昼食』現代版!とシャッターを押しました。そしてその時なんとなく頭に浮かんできた曲がジャズアーティスト、エスぺランサの「What AFriend」という曲でした。歌詞のない曲なので、題名からイメージを膨らませることができるのです。きっと、新婦のレナちゃんは心の中で、改めて友人の大切さを思ったりして幸福を感じていたのではないかな、と思います。

 十年続く友達は一生ものと言いますが、私も姉妹のようにも感じられる彼女と、これからもよき関係を続けていけたら、と思っています。おめでとう、レナちゃん!

“What A Friend”
(『チェンバー・ミュージック・ソサイエティ』より)
エスペランサ
ユニバーサル ミュージック

むらじ・かおり
1978年東京都生まれ。2003年、英国の名門レーベル「デッカ」と日本人初のインターナショナル長期専属契約。名実ともに日本を代表する、クラシック・ギタリストである。10月に新作『プレリュード』を発売。坂本龍一さんによるオリジナル曲なども入った意欲作。

photo & talk by Kaori Muraji
realization & text by Akiko Nakazawa