2カ月間に及ぶ隠岐諸島での貴重な体験

――翌12年には「劇団EXILE」公演ではない、舞台「十三人の刺客」にも参加されましたが、見える世界は違いましたか。

 いろんな俳優さんと一緒に舞台をやれることはとても刺激になりますし、先輩方に囲まれて舞台に立たせてもらって、とても勉強になりました。でも、(名物パフォーマンスである)和太鼓の練習だったり、キツさ的には実は「劇団EXILE」の方がキツかったりします(笑)。

――俳優として転機となった作品は、やはり古典相撲に挑む主人公を演じられた13年の『渾身 KON-SHIN』でしょうか。

 そうですね。現地の人と一緒に作品を作っていくことは初めてでしたし、2カ月間、一度も東京に戻らず、隠岐諸島にいて、役柄のこと以外は一切考えず、その作品に取り組めたというのは、とても新鮮で、貴重な経験でしたし、本来の役作りはこうあるべきだと思った作品でもあります。でも、東京で仕事をしているからといって、決してそれを言い訳にしてはいけないとも思っています。

――来年公開予定のHIROさん初プロデュース、青柳さん主演の時代劇『たたら侍』も、同じ錦織良成監督作ですね。

 いろんな監督さんがいますが、錦織監督はとてもピュアな方だと思います。役者の意見を取り入れてくれながらも、こだわりの部分は誰にも譲らない。ご自身で脚本を書かれているぶん、作品に対する熱量が違う監督だと思いますね。(第2回に続く)

青柳翔(あおやぎ・しょう)
1985年4月12日生まれ。北海道札幌市出身。06年、「EXILE VOCAL BATTLE AUDITION 2006」の応募をきっかけに俳優の道に進む。09年に「劇団EXILE」メンバーになり、映画・ドラマなどで活躍。13年には第22回 日本映画批評家大賞 新人賞(南俊子賞)を受賞。

『極道大戦争』
不死身と噂されているヤクザ・神浦玄洋(リリー・フランキー)に憧れ、神浦組に入った亜喜良(市原隼人)。敏感肌で入れ墨が入れられない彼は若衆のアンガス(青柳翔)らから見下されるが、暗殺者によって命を狙われた神浦に首元を噛まれてしまう、神浦からヤクザ・ヴァンパイアを受け継いだ亜喜良は覚醒し、毘沙門通りはパニックに陥ることになる。
2015年6月20日よりTOHOシネマズ 新宿ほか全国公開
(C) 2015「極道大戦争」製作委員会
http://www.gokudo-movie.com/

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2015.05.15(金)
文=くれい響
撮影=中井菜央