音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
クリープハイプ「愛の点滅」

早い段階から「楽曲のひとり歩き」に成功

伊藤 このコラムもロックバンドが続いちゃっていますけど、追い打ちをかけるように今回も4人組ロックバンド“クリープハイプ”のメジャー7枚目のシングルの「愛の点滅」。真木よう子、西島秀俊らが出演している映画『脳内ポイズンベリー』の主題歌ですね。

山口 最近の伊藤さんはロックバンドブームなんですね。

伊藤 そうみたいです(笑)。3年くらい前からこのバンドは知っていましたけど、ここ1年でかなり存在感が出てきたなって印象です。

山口  ネットでの話題としては、レコード会社移籍の際に、ベスト盤のリリースに対して「バンドの意志が反映されてない」という意思表明をしたというのがありましたね。

伊藤 ありました。でも別に契約違反とかそういうことじゃないですよね。レコード会社的には移籍で離れていってしまうアーティストでしっかりビジネスしたいと思ったんだろうし、バンド的には「勝手にやりやがって!」的な感情があるのは理解できる。ちゃんとコミュニケーションが取れていなかった、または取ろうとしていなかったってことで、音楽業界じゃよくありそうな話ですよね。それがネットで、良く言えば盛り上がった。これだけ話題になったってことはバンドが調子いいってことなんで、プロモーションになったくらいなもんじゃないですか。こんなことでバンドを嫌いになるファンはいないだろうし、マイナス売り上げに影響するとも思えないし。

山口 確かに、極めて日本的な出来事とは言えますね。契約書に書けない信頼関係も大切、という考え方ですね。契約的には正当でも、アーティストとファンの関係性をベースにしたビジネスと考えると、経済行為としては、最適化はできてないと言えますね。バンドが納得できる形で出したほうが売れたはずですね。

伊藤  それはそうですね。

山口 そのベスト盤と同じ曲順で、USTREAM中継のライブをやるという形で抗議の姿勢を示していましたね。論理的にはよく意味がわからないんですけれど、ライブ自体が魅力的だったこともあって、ファンとの絆は強まったようで、結果的には良かったですね。武道館2daysもやって、バンド的にはステップアップしている印象があります。

伊藤 ですね。彼らのビジュアル的にもサウンド的にも、まちがいなく下北系って感じのバンドで、いかにも“日本のロックバンド”って匂いがします。

山口 下北沢はギターロック系のインディーズバンドの聖地ですね。クリープハイプは、早くから作品性の高さが評価されて、CMなどでも使われていますね。

伊藤 もうずいぶん前だけど、蒼井優が出ていた資生堂のCMでは個性的なハイトーンボイスが「誰?」って思わせたし、最近だと広瀬すずが博多弁で「ブッチュー、ぜんぶ出たと?」とか言っていた、ちょっとあざとい感じのカップ焼きそばのCM、そのCMソングも印象的でしたね。

山口 ロックバンドは、CD売上やライブ動員数がある程度あっても、マスメディアで楽曲が使われるのには時間がかかるものなのですが、早い段階から「楽曲のひとり歩き」ができていたのは珍しいです。

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2015.04.29(水)
文=山口哲一、伊藤涼

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