オスマン時代から変わらないトルココーヒーの魅力

トルココーヒーは、表面がきめの細かい泡でおおわれていることが大切。

 小ぶりのカップの表面をおおうきめ細かい泡と、その下にたっぷりと注がれたこげ茶色のたおやかな液体……トルコに行くと必ず一度は飲むことになるのがトルココーヒーだ。およそ500年の歴史を持ち、2013年12月には日本の「和食」と同時に「トルココーヒーの文化と伝統」としてユネスコの世界無形文化遺産に登録されている。そんなオスマン・トルコ帝国時代から人々に愛されてきたトルココーヒーの歴史をたどる展示が現在、トプカプ宮殿内で開催中だ。

トプカプ宮殿入り口左右には「楽しみの一滴:トルココーヒーの500年展(A drop of pleasure:500 years of Turkish Coffee)」のポスターが。
トプカプ宮殿を入って、すぐ左に下って行くと右手にあるハス・アフルラルという別館にて開催されている。

 1517年、時のスルタン・セリム1世がエジプトを征服したことによって、オスマン・トルコ帝国はコーヒーの存在を知った。その後、スレイマン1世時代にイエメン知事オズデミル・パシャがコーヒーを宮殿に持ち込み、瞬く間にこの嗜好品が広まったという。さっそく宮殿には「コーヒー職人長」という地位が設置され、担当部署ごとに忠実で秘密が厳守できる専門の職人が選ばれた。

18世紀ごろのオスマン・トルコ帝国宮廷内にいた「トルココーヒー担当チーム」の版画。

 このため、展示最大の見どころはオスマン・トルコ帝国時代にこのコーヒー職人たちが使っていた道具コレクションだろう。

 コーヒー豆を炒る平たい鍋、炒ったコーヒー豆を冷ますための木皿、コーヒー挽き、トルココーヒーを煮出すのに使われるジェズベ、コーヒーポット…… これら一つ一つに細やかなレリーフが施されており、当時コーヒー作りがいかに重要任務であり、プレステージの高い文化であったかが垣間見える。また、豆や粉を保管していた専用木箱や専用袋にも素晴らしい彫り物や刺繍文様が入っており、コーヒーがかなりの高級品だったことが分かる。

 当時から、コーヒーは飲むばかりでなく、飲むまでの過程も楽しまれていたのだろう。

客人にトルココーヒーをふるまう時に共にサービスされていた香りブフルダン(香炉)とギュラブダン(ローズウォーター用霧吹き)。

文・撮影=安尾亜紀