インドの南東に浮かぶセイロン島は、北海道よりは小さいが九州よりは大きい“光り輝く島=スリランカ”。

 熱帯の小さな島は古代からの歴史と、海のシルクロードや大航海時代に往来した異文化とがブレンドされ不思議な魅力と表情を湛えている。でも、ベースは信仰篤い、温厚でほがらかな人々の笑顔。手先が器用で、教育水準が高くて、きれい好きな国は、幸運に出合う力=セレンディピティの語源となった。

 さまざまな顔を見せるスリランカの中で、4エリアのおすすめステイ先をご紹介します。

 第2回はスリランカの聖地「文化三角地帯」から。ミステリアスな場所に佇む、伝説の建築家が手がけた傑作ホテルとは?

» 第1回 【ゴール】城砦都市で“アマン”のホスピタリティを堪能
» 第3回 【ヌワラエリヤ】古きよき紅茶文化に浸る休日
» 第4回 【コロンボ】レトロで優雅なオールドデイズステイ

■ヘリタンス・カンダラマ
 Heritance Kandalama

2つの聖地を結ぶ位置に立つ緑に覆われたホテル

当初、シギリヤに近い場所に建設予定だったが、バワの強い意向で現在の場所になった。緑が育ち、年々自然に溶け込むように設計されている。

 右に奇岩シギリヤロックを遠望し、左に黄金寺院で知られるダンブッラを望むこのホテルは、緑豊かな丘陵の中腹に、埋もれるように立つ。眼前に広がる、古代からの貯水湖と草原。自然を愛した建築家、ジェフリー・バワが晩年に手がけた、彼の最高傑作のひとつといわれるホテルだ。

バワお気に入りはデラックスルームだが、コンパクト。ただし角部屋なので、窓からの景色は最高。
同じくデラックスのバスルーム。全面窓の抜群の眺望。建物が横長なので並びの部屋から見えてしまう心配はない。
眺望の良い場所には必ず椅子が置いてある。

 建物の全長は約1キロメートル。カンダラマ湖を見渡す高台からの眺望は、遮るものが一切ない。横長の構造上、客室からの景観は様々で、また客室以外のあちらこちらから、心地よい景色を存分に味わえる。

 建築家バワのことを知らなければ、シンプルな居心地のよいホテルくらいにしか思わないかもしれない。がこのホテルには、実に周到に建築家の意図が盛り込まれている。

ホテル前の湖で体を洗ってもらっている象たち。水浴びが好きな動物なので、とても気持ちよさそう。

撮影=小野祐次
構成・文=大沢さつき
コーディネート=橋迫恵(セレンディピティ倶楽部)