世界を旅するアート・インフォメーション

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鈴木理策の美しいプリント写真を通じて
人間の奥深い意識の世界を探る

大判プリントならではのディテールの描写力

 1980年代半ばから精緻でエモーショナルな写真作品を発表している鈴木理策。彼の個展が香川県の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催される。デジタルが全盛の時代に、鈴木は敢えてカラーフィルムでの表現にこだわり続けている。これまでに熊野や恐山といった信仰の場、セザンヌの連作で知られる南仏のサント・ヴィクトワール山、雪と桜などを主なテーマとしてきた。一群の写真がある場面のように展開していく連作の手法でも知られ、そのナラティブな構成力は高い評価を得ている。

 美術館での大規模な個展は2007年の東京都写真美術館以来となる。今回は新作と未発表作品を中心に、約80点の写真と3点の映像作品を展示。また建築家の谷口吉生が設計した美術館の展示空間を活かした会場構成も見どころのひとつだ。

 大判のカラーフィルムで撮影された写真の多くは、樹木や草花、水辺など自然の景観を題材にしたものだ。美しいプリントは大判ならではのディテールの描写力で観る者を魅了する。デジタル写真とは違って撮影後にイメージ処理を行う余地が少ないフィルムの写真は、一度だけの時間と場所の記録という性格を強く持つ。鈴木の写真が目指しているのは、その時、その場所で得られた感覚=意識を捉えることだという。

 「見るという行為に身をゆだねると、取り留めのない記憶や、さまざまな意識が浮かんできて、やがてひとつのうねりの様な感情をもたらすことがある」と、鈴木は自らの経験を語っている。彼の写真を通じて明らかになるのは、何かを見ることと表現することの深い関わりだろう。写真という日常的なメディウムを用いながら、人間の意識の奥深いところまで降りていくような世界観が魅力的だ。

鈴木理策写真展「意識の流れ」
会期 2015年2月1日(日)~5月31日(日)
会場 丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県)
URL https://www.mimoca.org/ja/

鈴木布美子 (すずき ふみこ)
ジャーナリスト。80年代後半から映画批評、インタビューを数多く手掛ける。近年は主に現代アートや建築の分野で活動している。

2015.01.28(水)

文=鈴木布美子

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