育休中にママのニーズを発掘

 役立っているのは、圧力釜だ。朝、それほどの労力を使わずに煮物やカレーを準備しておけるのは本当にありがたい。帰ってからの仕上げも楽だし、夕食が貧相にならずにすむ。

 もう一つは友人から譲ってもらった、ベビーモニター。鈴木さんの家は一戸建てで、赤ちゃんが寝ている部屋とキッチン・リビングが離れていて泣き声も聞こえない。

 ベビーモニターを使うまでは寝ている子を頻繁に覗きに行かなければならなかったが、今は動きがよくわかり、「起きたようだ」とか「泣いているけれども、もうすぐ寝そうだ」などと判断できるので、目の前の家事に集中できるようになった。

ベビーモニターで赤ちゃんの声をしっかりキャッチ。

 「子どもの寝かしつけには、いろいろ試しましたが、何より役立ったのは絵本なんです」と鈴木さん。成長するにつれ、子どものお気に入りの絵本は変化しつつあるが、今までで最もおせわになったのは『もうねんね』。何度も何度も読み込み、鈴木さんにとっても愛着の深い本となった。

お気に入りの本たち。今は『スイミー』が大好きだとか。

 育休中には、絵本好きの子どものために行政の読み聞かせ広場に参加しようとして「定員満員でお断り」という目にもあった。ただその経験が、自分も含めママたちのニーズを知ることにつながり、それが今の「けんけんぱーく」の誕生へ結びついた。

 鈴木さんを支えるのは「おかしいと思ったことに声をあげる勇気」と「今の環境をよりよくしていこうとする創造力」だろう。

 「仕事柄仕方ないことだとは思いますが、休日出勤や残業は当たり前。結果、プライベートを犠牲にするか、結婚・出産するには仕事を辞めざるをえないと考える女性がほとんど。でも絶対にどちらか選ばなくていけない、ということはないと思うんです。おかしいと思ったら誰かが言っていかなくちゃ変わっていかないですよね」と鈴木さん。勇気を持って踏み出した一歩が、周りを変えつつある。鈴木さんが投じた一石が、業界全体にさざなみのように広がっていくかもしれない。

 「『自分の会社は古いから時短制度や育休など要求しても無理』と、最初から諦めている人は多い」と鈴木さん。「まずは一言、自分から声を出すことを始めたら、少しずつ変わっていきますよ」とやわらかい笑顔でメッセージを送ってくれた。

Column

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2015.01.29(木)
文・撮影=HITOMINA