チキンライスおにぎり? ご当地チキンライスもたくさん!

 日本の面積の9割弱の国土を持つマレーシア。その土地ごとに独自で食べられるようになった、ちょっとユニークなご当地チキンライスをご紹介します。

マラッカの人気店「和記鶏飯」のチキンライスボール。鶏肉とご飯は別々にサーブされる。ライスボールは3個や5個など、希望を伝えればご飯の量を調節できる。

 まずは世界遺産の町マラッカで食べられている、ご飯の形がユニークな「チキンライスボール」。

 鶏肉自体は海南鶏飯の味付けと大きな違いはありませんが、なんと言っても注目すべきは、丸く握られたかわいらしいご飯の形! この料理、チキンライスボールと呼ばれており、まさに「鶏おにぎり」。パラッとしたタイ米(インディカ米)をギュッと圧力をかけてゴルフボール大に丸めるため、おにぎりよりもご飯の密度は濃く、見た目の大きさよりもボリュームがあります。

 なぜご飯を丸めて食べるのかは、その昔、お弁当として持ち運ぶときに便利だった、という説もありますが、真相は今も謎のままだそう。

スプーンとフォークで、ご飯をほぐし、鶏肉と別添えのタレを混ぜながら食べる。(写真提供:重松明日美さん)
香味油と醤油で作られた、さっぱりとしたタレがしみ込んだ鶏肉。このタレとほぐしたご飯の相性も抜群で、もちっとしたチキンライスボールが何個でも食べられてしまう。(写真提供:重松明日美さん)

 次はマレー半島北西に位置するイポー。中国系が多く暮らす町の、その名も「イポーチキン」。マレーシアではチキンライスと言えばイポーチキン! と熱く語るファンも多いチキンライスです。

ふわっと柔らかな鶏肉の食感とあっさりとした醤油系のタレは、一度食べたら誰もがハマる味。(写真提供:かおりさん)

 味わい深いチキンは、日本で言えば地鶏である“カンポン・チキン”と呼ばれる鶏を使用。香味油と醤油で作った、あっさりとしたタレを鶏にかけるだけのシンプルなものですが、その味は絶品! イポーチキンを食べるためにイポーを訪れるマレーシア人も多いのですから、その人気の高さがうかがえます。

 ちなみに、イポーチキンに欠かせないサイドメニューがもやしです。もやしが名物と聞くと、どうしても日本人は「え? もやし……?」と思ってしまいますが、水がきれいな町として知られるイポーのもやしは格別な味なのです。調理法はさっと茹でて軽く醤油ダレをかけただけ。みずみずしく、そして軽いシャキシャキとした食感は、日本人が持つもやしの概念を変えてくれるほどの美味しさです。

ぷりぷりの茹でもやしは、柔らかなイポーチキンとの相性抜群!(写真提供:かおりさん)

 次に紹介するのは、ボルネオ島北部に位置する東マレーシア、サラワク州の州都クチンで食べられているチキンライスです。鶏肉にゆでたまごが添えられているのが特徴です。

 日本の親子丼と同じ発想から生まれた料理なのか、鶏肉とたまごを混ぜて食べるのが、クチン流。サラワク州はマレーシアの国土の37.7%を占めるほどの広さを誇りますが、ゆでたまごが添えられる、このスタイルのチキンライスが食べられるのは、クチンとその周辺のみ。マレー半島側では食べることができませんので、クチンを訪れた際は、ぜひ食べてみることをおすすめします!

鶏肉はスチームタイプで、甘口醤油のソースがたっぷりとかかっている。やはりお好みで甘辛チリソースをかける。(写真提供:重松明日美さん)

2015.01.22(木)
文=三浦菜穂子
写真=古川 音、三浦菜穂子