幻の花“タンギモウジア”に秘められた伝説

世界でいちばん初めに朝を迎えるタベウニ島に迫る夕暮れ。明日もきっといい天気。

 また、タベウニ島はフィジーの国花にして、幻とされる花“タンギモウジア”の生息地でもあります。

 この花には、いくつかの伝説が残されています。そのひとつは名前に由来するもの。

 昔々、王女が父に強いられた婚約者と結婚しなければなりませんでした。けれど王女には恋人がいて、悲嘆に暮れた彼女は村から逃れ、山の中へ。疲れ果てた王女は湖のほとりで眠ってしまいました。夢の中でも彼女は泣き続け、頬を伝った涙が赤い花に変わり、タンギモウジアになりましたとさ。

 こうして人々はその赤い花をタンギ=泣く、モゼ=寝る、つまり「夢の中でお泣きなさい」と呼ぶようになったそうです。

 国花とはいえ、めったに見ることのできない希少なタンギモウジア。標高800メートル以上の山間の高地にしか生息せず、開花するのも8月~1月にかけてのみ。花を見つけ出すにも一苦労らしく、一日がかりで山へ入らなくてはなりません。

 ホテルのスタッフたちに聞くと、「娘の卒業式の記念に」あるいは「母親が病気の時に」など、地元の人にとっても特別な時にこの赤い花を摘みに行くのだそう。いつか、一度見てみたいものです。

服をいっぱい汚して遊んでも、晴れた日は毎日きれいに洗濯を欠かさないタベウニ島の日常。

 島内を車で回ってみると、子供たちが小川で洗濯の手伝いをしていたり、木々に埋もれるような小さな家の庭にカラフルな旗のようにTシャツが一列に並べて干してあったり、素朴な島の風景に出会えます。

 通りすがったファミリーに写真を撮らせてとお願いすると、お父さんが「ちょっと待って」という仕草を見せながら、ブーゲンビリアの花を摘んで耳の脇に差し、にっこりポーズ。鮮やかな色に囲まれた、心豊かな暮らしがうかがえます。

元気に葉を広げるヤシの木々。目にする植物はどれも精気に満ち、葉も花も色が濃いように見えます。

 そんな豊かな自然が主役のタベウニ島ですが、ちょっとした観光スポットもあります。

 それは「日付変更線」。平原にぽつんと建てられた看板が目印で、二つに分かれた地図の合間に立つと、今日と昨日の合間にいることになるのです。見えない線をまたいで、今日と昨日を行ったり来たりするのが、このスポットでのお約束の遊び方。

日付変更線の前で、今日と昨日がこんにちは。

 世界で最初に朝を迎えるタベウニ島、一日をはじめるコーヒーを誰よりも先に飲んでみませんか?

タベウニ島
●アクセス ビチレブ島のナンディから国内線で1時間30分
●おすすめステイ先 ガーデン・アイランド・リゾート
URL http://www.gardenislandresort.com/

【写真提供】
フィジー共和国大使館

URL http://fijiembassy.jp/

古関千恵子 (こせき ちえこ)
リゾートやダイビング、エコなど海にまつわる出来事にフォーカスしたビーチライター。“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”をループすること1/5世紀あまり。世界各国のビーチを紹介する「世界のビーチガイド」で、日々ニュースを発信中。
「世界のビーチガイド」 http://www.world-beach-guide.com/

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2014.12.13(土)
文・撮影=古関千恵子