イスタンブールで本当に美味しいトルココーヒー

 今やチャイの方が主流に見えるトルコだが、より歴史が古いのはトルココーヒーだ。現代でもコーヒーを愛してやまないトルコ人は多い。

清く正しいトルココーヒーは、繊細な泡が表面をおおっている。飲むのは上澄み液だけ。
お昼を過ぎると、小さな路地には立ち飲みも出てくる。

 数年前、トルコの家電メーカーがトルココーヒーマシーンなるものを開発した。本来、トルココーヒーは「ジェズベ」というひしゃくに似た専用パンでじっくり煮出して作られるものだが、マシーンの登場でその手間が一気に省かれた。今では多くのカフェがこの機械でサービスするようになったが、これだとやや粉っぽくて苦みが多く、味に深みがない感がある。

 イスタンブール・イスティクラル通り沿いの路地にある「マンダバトマズ」は、本当に美味しいトルココーヒーを従来通り、ジェズベで煮出して作ってくれる店だ。店といっても路地沿いに小さなイスとテーブルが5セットほど並んでいるだけで、メニューはコーヒーとチャイぐらいのもの。

このキュートな看板が目印。

 厨房に立つのは、オーナーでトルココーヒーひと筋50年のジェミル・フィリックさん。御年62で、12の時からトルココーヒーを淹れ続けてきたという。

この道一筋、ジェミルさん。この小さな厨房で、美味しいコーヒーが作り出される。

 12時を過ぎた頃から店にはどんどんお客さんが入り始める。ジェミルさんは息つく暇もないぐらいコーヒー淹れに大忙しだ。小さい店だというのにサービスするウエイターは4人もいて、誰もがフルに走り回っている。

若い人にも人気で、憩いの場となっている。

文・撮影=安尾亜紀