『こうもり』では自然なウィーン訛りが求められる

オペレッタの醍醐味が集結した作品。
『こうもり』(2011年12月公演より) 撮影:三枝近志/提供:新国立劇場

――2015年1~2月には、再び新国立劇場でオペレッタ『こうもり』の主役アイゼンシュタインを歌われます。この役は新国立劇場では2011年に続いて二度目になりますね。

「実はそれまで『こうもり』ではアイゼンシュタインを騙すファルケ博士のほうをかなりの回数歌ってきて、新国立劇場がロール・デビューだったのです。不安もありましたが、プロダクションに飛び込んでみたら素晴らしいキャストとの共演で、大きな喜びを得ることができました。そこから、ウィーンに帰ってからもアイゼンシュタインを歌いたい、と思うようになったんです。すべては最初に演じた新国立劇場での経験がスタートラインでした。とても心に残っていますよ」

ウィーンならではの大人のユーモアも。
『こうもり』(2011年12月公演より) 撮影:三枝近志/提供:新国立劇場

――演出のハインツ・ツェドニク氏はウィーン出身ですし、エレートさんもウィーンの方です。このヨハン・シュトラウス2世のオペレッタには、ウィーンの人にしか分からない秘密が存在するのではないですか?

「ちょうどそのことを、昨日も指揮者の方と話していたところでした。ウィーンということを大切にしないとうまくいかないオペラがふたつあって、それはリヒャルト・シュトラウスの『ばらの騎士』と、この『こうもり』なんです。特に『こうもり』のファルケ博士とアイゼンシュタインはウィーン訛りが出来ないと難しい。ウィーンに住んだことがあるか、少なくともウィーン訛りを理解していないと厳しいのです。『ばらの騎士』よりも、『こうもり』は会話が多いので、その要素がさらに強まると思います」

――まさにエレートさんに相応しい役です。

「オペラやオペレッタは、たくさんの色を重ねて描く油彩画の世界に似ていますね。とてもカラフルで絢爛としています。それとともに、私にとっては歌曲も重要なもので、絵画にたとえると水墨画の世界です。ふたつの世界を行ったり来たりすることによって、どちらも豊かになり、歌手としての自分が人生のどのあたりにいるのかを知ることができるのです」

――大変興味深いお話を伺うことが出来ました。二つの舞台のご成功をお祈りしています。

「ありがとうございます。是非舞台を観にいらしてください」

新国立劇場オペラ『ドン・ジョヴァンニ』
URL http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/141016_003716.html
会場 新国立劇場 オペラハウス
日時 2014年10月22日(水) 14:00~
   2014年10月24日(金) 18:30~
   2014年10月26日(日) 14:00~

新国立劇場オペラ『こうもり』
URL http://www.nntt.jac.go.jp/opera/performance/150129_003713.html
会場 新国立劇場 オペラハウス
日時 2015年1月29日(木) 19:00~
   2015年2月1日(日) 14:00~
   2015年2月4日(水) 14:00~
   2015年2月6日(金) 19:00~
   2015年2月8日(日) 14:00~

小田島久恵(おだしま ひさえ)
音楽ライター。クラシックを中心にオペラ、演劇、ダンス、映画に関する評論を執筆。歌手、ピアニスト、指揮者、オペラ演出家へのインタビュー多数。オペラの中のアンチ・フェミニズムを読み解いた著作『オペラティック! 女子的オペラ鑑賞のススメ』(フィルムアート社)を2012年に発表。趣味はピアノ演奏とパワーストーン蒐集。

 

Column

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2014.10.21(火)
文=小田島久恵
撮影=山元茂樹