Magnificent View #374
コタキナバルの水上集落(マレーシア)

(C) Robert Harding Images / Masterfile / amanaimages

 「水上集落」と聞くと、貧しい暮らしを想像してしまうかもしれない。だが、ボルネオ島サバ州では、水上に家屋を建てることは昔から続く伝統であり、必ずしも貧しさを意味しない。島で最も賑やかな街、コタキナバルの近郊には、その水上家屋が広がる地域がある。

 漁業を糧とする民族が海沿いに高く柱を立て、その上に家を作ったのが、水上集落の始まり。風が通るため熱帯でも涼しく、軒下に泊めた船に乗って家からそのまま漁に出ることもできる。集落には商店もあるし、電気も使用できるという。

 個々の家は渡り廊下のような木の橋で繋がり、集落の人々はそこを自由に行き来する。そこには、近代的なマンションにはない、昔ながらの暮らしが息づいているのだ。

 しかし、政府は衛生面から上下水道完備の陸上住居を奨励している。この光景も、数年後はもう見られないのかもしれない。

Column

今日の絶景

この広い地球上には、まだまだ知られざる素晴らしい景色がある。思わず息を飲んでしまう雄大な自然、ミステリーにあふれた驚きの奇観、そして、人間の文明が刻んだ偉大な足跡……。ここに、選りすぐりの絶景をお届けします。さあ、ヴァーチャルな世界旅行へと出かけよう!

2014.10.09(木)
文=芹澤和美