爽やかに澄んだ空気の中で、美味を通して自然を実感

ブレストンコート ユカワタン
メニュー名:コースメニュー

緑の中に佇む「ホテル ブレストンコート」の外観。

“キレイになれる”というお題にそって“食材の効能”にスポットをあてることが多い当コラムですが、今回は趣向を変えて“自然に感化されてキレイになる”がテーマです。

 人は美味しいものを食べると、満足して幸せな顔になるもの。さらに一歩進み、ハッとするほどの美味に出合うと、脳の神経細胞がいっせいに活動し、ひらめきのインスピレーションがやってきます。そうなると脳内には快楽ホルモンのドーパミンが放出され、交感神経が刺激されて瞳孔が開くため、目が輝き始めます。

 どんな美味しさにハッとするかは人それぞれですが、「美味を通して自然を感じる」という、都会暮らしの身にとって刺激的な経験を、先日軽井沢でしてきました。

 その経験の場は、軽井沢の「ブレストンコート ユカワタン」です。「ユカワタン」は今年で開業50周年を迎える「ホテルブレストンコート」のメインダイニング。森に囲まれた敷地内には、爽やかに澄んだ空気が流れています。秋の虫の音に耳を癒されながら「ユカワタン」の建物へ到着し、席に着くと、ゆったりした美食の時間が始まります。

ユカワタンの名物「6種のアミューズ」。左から順に、前菜~デザートの小さなコース仕立てに。
繊細な盛りつけが美しい、鮎のカルパッチョ。
総料理長の浜田統之さん。ボキューズ・ドールの魚料理部門では世界最高得点を獲得!

「ユカワタン」は川や森、豊かな自然に恵まれた信州の食材を「水のジビエ」と喩え、その野生の命をフランス料理の技で料理の中によみがえらせるレストラン。総料理長の浜田統之さんは昨年、ボキューズ・ドール国際料理コンクールで日本人初の銅メダルを受賞した方。ここでお会いできたのはラッキー、と、審査の話をうかがってみました。

「ボキューズ・ドールは欧州の若手シェフの出世の登竜門と目される賞で、料理の味や見た目はもちろんですが、最近の審査では食材を余すことなく使い切れるかどうかなど、食材の扱い方も評価対象となってきています」

「ユカワタン」では豚や羊を部位ではなく一頭で仕入れ、それぞれの部位に最も適した方法で調理しているそう。そんな話を聞くと、食材の「命」に思いが馳せられます。

「命をいただく有り難みに気付くと、ちゃんと生きていかねばって思いますよね」。ここでは自然に生まれるそんな会話をシェフと交わしていた、同行の友人。“食べること=命をいただくということ”を思い出してハッとし、脳内にドーパミンが放出されたのでしょうか、彼女の瞳が輝いたのを確かに目撃しました(おそらく私の瞳も!)。

鴨のさまざまな部位を生かしたロースト。

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2014.09.26(金)
文=小松めぐみ