旅館道 その2
「地方に息づく伝統工芸の美しさを見てみよう」

寒冷紗(かんれいしゃ)と呼ばれる、農作物から寒さを避けたり、日よけとして使われていた平織りの津軽藍染の布に、こぎん刺しのカバーをかけたオブジェ。

 青森には、「こぎん刺し」と呼ばれる、農作業などの着物に施されていた刺繍がある。縞模様やくつわつなぎと呼ばれる、魔除けの意味合いのあるパターンなのだが、その幾何学的な模様はどこかモダンな感じすらする。

外からの光でこぎん刺しの美しいパターンが浮かび上がる襖。
こぎん刺しの幾何学的な美は、まさにグラフィックアート。

「界 津軽」は、このこぎん刺しを現代の創造活動に生かしている青森出身の新進気鋭のグラフィックデザイナー、山端家昌氏とコラボレーション。「界」では、こうした地方の魅力を感じてもらえる客室を「ご当地部屋」としてプロデュースしている。「界 津軽」の場合は、一軒家の離れ「悠庵」が、オブジェや襖にこぎん刺しの柄が浮かび上がるご当地部屋、「津軽こぎんの間」だ。

濡れ縁の向こうにはお庭が広がり、静けさに包まれた離れのご当地部屋。

 このご当地部屋には、続き間にもなる10帖と6帖の和室2間に、茶室や水屋、専用の露天風呂もあって、宿泊ができるほか、9~11月の毎週水曜日にはここで津軽三味線のライブも行われる(2014年は10月8日を除く)。

9~11月の毎週水曜日には、この和室で津軽三味線ライブが開かれる。離れの特別室で、身近にその音を聴く贅沢。
鮮やかなバチさばき、太棹の上を自在に動く指。津軽三味線の鮮やかな演奏に眼が吸い寄せられる。

 ご当地部屋とは別に、こぎん刺しの歴史やパターンなどについて「こぎん刺しからkoginへ」をテーマにした展示が、宿泊棟の3階で行われており、山端家昌氏の作品も飾られている。

「こぎん刺し」を目で見て楽しめる展示コーナー。今後、展示を拡大して「koginギャラリー」にする計画だそう。

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2014.09.13(土)
文=小野アムスデン道子
撮影=山元茂樹