#7 ウルパラクア高原

ワイナリーで試飲した後は、広い庭の木陰でゆっくり昼寝が一番。

 ハレアカラ頂上から、マケナの方面に海へと向かって切り取られた三角形のモク、ホヌアウラ。モクとはハワイ古来の土地の区分であり、山から海へと延びていることが多い。ホヌアウラもその一つだ。

 ウルパラクアはホヌアウラの山側、ハレアカラの裾野にある。標高は約600メートルのあたり。19世紀半ば、サトウキビ産業の発達した時期に、ハワイ王国のカメハメハ3世からウルパラクアに広大な土地を借り、サトウキビ・プランテーション産業をはじめた者がいた。

 やがて、サトウキビ産業の衰退のあと、牧場経営を目的にウルパラクアの地を引き継いだのが、貿易産業で成功したジェイムス・マキー。妻のキャサリンの愛した、マウイ島の花であるロケラニというバラの花を育てたことから、ここはローズ牧場と呼ばれた。ジェイムスは人々が働きやすい環境を作り、農業や牧場経営を成功させるばかりではなく、貿易業で培った世界中の人々との繋がりを大事にし、多くの訪問客を大切にもてなしたそうだ。

 訪問客のなかには、カラカウア王と妻のカピオラニ王妃もおり、二人をもてなす際にはハワイの植物を溢れんばかりに飾り、食事や音楽などをゆったりと楽しめるように準備したことは当時の新聞記事にもなっている。特にカラカウア王はその後も何度となく訪れるようになったため、ジェイムスは専用のコテージを用意していた。それが現在のマウイズ・ワイナリーの試飲ルームである。

 高原の空気が心地よい。山から吹く風はひんやりとして湿り気を帯びている。高原から見上げる山には午後になれば雲がかかり、時々、霧雨が風にのってやってきて、牛たちが放たれた草原を濡らす。海を見下ろすと、黒い火山台地から、ワイレアなどのリゾート、マアラエアの港までが見える。山から海までの大自然に囲まれた環境はもちろん、見晴らしのよい、遠く離れたところから何かを見るという行為自体も、気分を一新する。


【Access & Advice】
カフルイ空港からハナ・ハイウェイをパイア方面へ。ハレアカラ・ハイウェイを右折し、プカラニまで15分ほどドライブ。クラ・ハイウェイに入り、クラ、ケオケアをすぎ、ウルパラクアまではさらに30分ほど。マウイズ・ワイナリーではワイナリーのツアーや試飲以外にも時間をとってゆったりと過ごそう。ワイナリーのオープン当初、葡萄が育つまでの間に醸造したというパイナップルのワインは今でも人気。ウルパラクア・ランチ・ストアでは牛やエルクを使ったグリルド・バーガーが絶品。

神宮寺愛(じんぐうじ あい)
ライター・コーディネーター・翻訳(英語・ハワイ語)・フラダンサー。出版社勤務後、フリーランスになり、日本文化とハワイ文化に親しむべく、学びの日々を続けてマウイ島在住14年目。13歳の娘とイタリア系アメリカ人のパートナーとの三人暮らし。雑誌への寄稿多数、著書『心と体がピュアになるハワイアンな暮らし』(青春出版社)など。

2014.08.24(日)
文・撮影=神宮寺愛