素朴で丈夫な生地は、会津人気質そのもの

 会津木綿の特長は、厚手で丈夫、そして扱いやすいこと。汚れても洗濯機で丸洗いできるし、パンパンと叩いて干しておけば、シワにもならない。さらに、藍染めしたものは、虫除けの効果もあるという。白虎隊の少年たちが愛用していたのも、会津木綿の着物だった。

中庭に干された染めたての糸。凛とした青が美しい。

 自宅で洗えるうえに、ほぼ一年中着られる会津木綿の着物は、いわばジーンズ感覚で着られるカジュアルな和装。反物で8,000~10,000円ほどというリーズナブルな価格も嬉しい。なにより、織元が大切に伝統を守り続ける木綿を纏うのは、なんとも気持ちがいいもの。

 でも、なんといっても一番の魅力は、素朴な風合い。素朴さをかもし出しているのは、シンプルで凛とした、その柄だ。無地織りや縦縞、格子縞……など、柄そのものはけっして華やかではないのに美しく、芯の強さを感じずにはいられない。

 会津木綿の縞模様は、江戸時代、村ごとにあった「地縞」と呼ばれる柄の特徴がルーツ。地縞は、縦縞の太さや色あいで区別する、地域性の強い制服のようなものだ。東京オリンピックを迎え、人々の生活スタイルが大きく変わるまでは、正月の「初市」といえば、地縞の着物を着た人で賑わっていたという。初市というのは、会津地方で年初に開かれる大きな露店市場。着物を見れば、すぐにどこの村から来たかが分かり、そこからコミュニケーションも広まっていったのだろう。

昭和30年代の浴衣の生地見本(左)と。大正時代の字縞の見本帳。

 やがて着物から洋服が主流になり、地味な地縞を見ることもなくなった。しかし、昭和40年代、「山田木綿織元」に、カラフルな会津木綿の着物や小物が登場。昔は茶色や藍色など、地味な色しかなかった会津木綿も、今では色鮮やかなものやチェック柄など、デザインもバラエティー豊かになり、現代人に愛されている。

カラフルな会津木綿の小物は、お土産にもぴったり。
夏は暑く冬は豪雪という会津で育まれた会津木綿。夏はさらっとして涼しく、冬は暖か。

 飾り気がないけれど暖かみがあって、決して主張はしないけれど、芯の強さも秘めている。そんなところが、生粋の会津人気質にも似ている会津木綿。もう何十回と洗濯をしている私の会津木綿の着物も、いまだ色あせることがない。

山田木綿織元
所在地 福島県会津若松市七日町11-5
電話番号 0242-22-1632
URL http://www.aizu.com/org/aizu/yamada/
営業時間 9:00~18:00
定休日 無休

芹澤和美 (せりざわ かずみ)
アジアやオセアニア、中米を中心に、ネイティブの暮らしやカルチャー、ホテルなどを取材。ここ数年は、マカオからのレポートをラジオやテレビなどで発信中。漫画家の花津ハナヨ氏によるトラベルコミック『噂のマカオで女磨き!』(文藝春秋)では、花津氏とマカオを歩き、女性視点のマカオをコーディネイト。著書に『マカオノスタルジック紀行』(双葉社)。
オフィシャルサイト http://www.serizawa.cn

Column

トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート

大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!

2014.08.12(火)
文・撮影=芹澤和美