野菜作りに酪農、漁業。ピチピチ素材ならお任せあれ。土地のパワーがギュッと詰まった極上の一皿に出会う旅。

 北海道フレンチを知り尽くす食のジャーナリスト、齋藤壽さんが日本で最もフランス料理が盛り上がりをみせるこの地で、厳選店をご案内。

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Molíère (レストラン・モリエール) [札幌]

現在、地球上で2店しかない日本人シェフによる3ツ星フレンチの1店。
流行にとらわれず、素材としっかと向き合い、

我が道をゆく中道博オーナーシェフの料理はまっすぐ奥深く、食べるひとの胸を打つ。

「鮑」ディナー15,000円(税込)コースの一品。蝦夷鮑を昆布で巻いて8分蒸した後、イカスミ入りのパン粉とセモリナ粉をまぶしてオリーブ油でカリッと焼き上げている。イカスミのリゾットには木の芽を添えて。

“「熱々」、作りたての極限を目指す精緻な料理”―― 齋藤

左:「百合根」。10~ 3月の間はすべてのコースに登場。
右:「牡丹海老」同コースの一品。活き牡丹海老を半分に切って、殻付きで火を通し、軽く炒ったふきのとうを散らして。身がぷっくり盛り上がるのは活きの証。

 オープン以来30年間通い続ける常連紳士や、小学生の女の子を連れたファミリー。ミシュラン3ツ星店とはいえ、セレブが多く訪れる東京や関西の店とは、ひと味違う顔ぶれが席を埋める空間は実に和やかだ。

 1970年代にフランスの3ツ星で腕を磨いたオーナーシェフ、中道博さんが目指すのは街のみんなが通えるレストラン。人気の理由は、高級店としては驚くほど控えめな価格設定だけにあるのではない。

中道博オーナーシェフ(右)とその右腕、今智行シェフ。狭い厨房では蟹歩きで仕事をしているのだとか。

 ゲストの目当ては素材の魅力が存分に引き出された迫真のコースである。使う素材は、ほぼ道産。それも最上級のものばかり。

 調理前、テーブルにピチピチ跳ねる姿で現れた活き牡丹海老は、骨格も身の盛り上がりも驚くほど立派。シグネチャーディッシュ、真狩村で採れた百合根の存在感に圧倒される。

 加えて、料理はどれも熱々。「ティエッド(tiède)」というぬるめの温度を常とするフレンチでは珍しいが、熱々は日本人が大好きな温度。その温度を死守するため、中道さんはできたての料理を提供することに全力を注ぐ。

 「今流行の化学実験的な調理法も全部試したうえで、あえて飾らないシンプルなスタイルを貫くには、ある種の勇気が必要。それに、他の3ツ星では数十人の手間をかけて行う精緻な仕事を、喫茶店並みに狭い厨房で5人前後でやってのけるなんて驚くほかない」と齋藤さん。

 ここに来れば、おいしさとは何か、その本質に、きっとたどり着けるだろう。

Molíère (レストラン・モリエール)
所在地 北海道札幌市中央区宮ヶ丘2-1-1 ラファイエット宮ヶ丘1階
電話番号 011-631-3155
営業時間 11:30~14:00ラストオーダー、17:30~20:00ラストオーダー
定休日 水曜日
席数 テーブル25
予約 可
カード 可 
予算 ランチ2,800円~、ディナー6,800円~(料理はコースのみ)、グラスワイン1,100円~、ボトルワイン7,500円~(各税込)

齋藤壽 (さいとうひさし)
食のジャーナリスト&コンサルタント。北海道出身。『専門料理』編集長を経て、『料理通信』編集顧問、「ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ」料理顧問、今春開塾した「美瑛料理塾」塾頭も務める。

2014.05.19(月)
文=寺尾妙子
撮影=石井宏明

CREA 2014年6月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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