気軽に聴くことができるのに奥深い作曲家プッチーニ

2003年9月、東京文化会館大ホールにおいて上演された東京二期会オペラ劇場『蝶々夫人』の一場面。 (C) 鍔山英次

 プッチーニのオペラは、ロマンティックなメロディとスケール感のあるオーケストラが特徴的。指揮をしていても大きな喜びを感じると語る。

「このオペラを理解しよう! と席に座って念じなくても、音楽からやってきて心を奪うのがプッチーニ。ミュージカルぎりぎりの線で、ハリウッドの映画作曲家たちも全員プッチーニの影響を受けている。気軽に聴いても耳に残るし、さらに奥深く聴いても素晴らしいという、稀な作曲家です。イタリアのオペラの歴史の中で一番情熱的な曲を書いた作曲家というだけでなく、ヨーロッパのさまざまな国の作曲家の要素も取り入れている。プッチーニが書いた12作中9作のオペラはすべて傑作で人気が高いけど、ヴェルディが書いた28のオペラのうち頻繁に上演されるのはだいたい5作くらいです。ヴェルディはベルカント・オペラ(ロッシーニの時代のオペラ)の影響を受けて、歌手の伴奏のようなオーケストラを書いていたから。ヴェルディでオーケストラ的に面白いのは、最後の6つの作品ですね」

 歌うように快活に喋る声がとても耳に快い。やはりイタリア語はオペラの言葉なのだ。
「まれに、指揮をしながら歌手の代役もします。ヴェルディの『シモン・ボッカネグラ』の冒頭で、歌手の声が出なくなったので、オーケストラ・ピットの中で彼のパートを歌いました。ある重要な劇場で……名前は言えません(笑)」(※ミラノ・スカラ座と思われる)

<次のページ> 20年後は世界で一番嫌な指揮者になっている?

2014.04.20(日)
文=小田島久恵
撮影=鈴木 遼