vol.3_資生堂

作り手と使い手をつなぐ
WEB発信の新たなカタチ

写真中段左のPCに映る「脳キュン」は、資生堂が取り組む脳研究がテーマの「この『胸キュン』を教えてあげる」より。上段は吉田イチオシ「マトリョーシカでもわかる、真皮幹細胞」、下段右の「黒方~時を超えた香り」はヨーロッパ圏で評判。とにかく見てみて!

 化粧品メーカーのWEBサイトは常にウォッチングしているが、ここ1~2年の大ヒットといえば資生堂グループ企業情報サイト内にある「Pick Up Technology ~ ピックアップ・テクノロジー」だ。最初に見たとき目が釘付けになり、以来、ライター仲間や編集者、読者のみんなに「絶対に見てみて!」と拡散活動している。とにかく画像が素晴らしい。ストーリーも絵柄もポップでお洒落。楽しく見ながら「へぇ~」な驚きがあったり、コスメの最先端を知ることができる。まさに「まるごとブランド魂」といえるサイト。いったいどんな人たちが作っているのかずっと気になっていたのだが、今回そのキーパーソンのひとり、資生堂 技術企画部の松本理絵さんに話を聞くことができた。そもそもこのサイトが生まれたきっかけとは?

「資生堂の技術力をより多くのお客さまにわかりやすくお伝えしたいという思いがありまして。2010年に社内プロジェクトを結成し、検討を重ねた結果、その伝達手段としてWEBを強化するとともに動画による技術情報の発信に新たに着手しようとの結論に至り、2011年4 月よりスペシャルサイトとして『Pick Up Technology』を制作、公開をスタートしました。その後、2012年11月にデザインを一新してサイトリニューアルを行い、アクセス数も伸びています」(松本さん)

“お勉強”仕立てじゃないから
難しいテーマもすんなり理解できる

 現在、オリジナルムービーはYouTubeの「資生堂公式チャンネル」でも配信され、スマートフォンからも見られる。日本語版は22のムービーと4つのテキストコンテンツ。英語版は13のムービーと4つのテキストコンテンツを展開中(2014年3月現在)で、世界からの注目も高まっているらしい。資生堂はホームページを立ち上げたのも早く(1995年)、20年近い歴史がある。「Pick Up Technology」のクオリティの高さはこうした実績があってのことだと思う。切り口や演出も凝っていて、難しいテーマも“お勉強”仕立てじゃないからすんなり入れる。注目の機能が実験シーンを交えて紹介されていたり、品質や安全性のこだわりも知ることができる。商品情報とはまた違う発見があって、コスメ好きにはたまらない盛りだくさんの内容だ。

「コンテンツの更新は基本的には2カ月に一度。重要なのがテーマ選定なんですね。お客さまが興味を持っていることをリサーチすることもありますし、最先端の技術はどうしたらお客さまに理解していただくことができるか、検討に時間をかけています。そして、クリエイティブ部門や外部スタッフと企画を詰めて撮影へ。1本作るのに3カ月くらいかかります。タイトルやキャッチコピーも結構こだわっているんですよ」(松本さん)

<次のページ> 知れば知るほど見たくなる!? ムービー制作こぼれ話

2014.05.04(日)
文=吉田昌佐美
撮影=塚田直寛

CREA 2014年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

たのしいガクモン

CREA 2014年5月号

そろそろ本気でお勉強!?
たのしいガクモン

特別定価780円