京都の山里と言えば、北東の大原が有名ですが、南西にある大原野も忘れてはいけません。大原野は西山の麓に南北に広がり、平安時代前から開けました。平城京や短命だった長岡京から近かったからかもしれません。

 善峯寺はそれにしてもよくぞここに、と言うくらい山中を登ったところにあります。そのため京都市南部を見下ろせる、絶景ポイントです。歴史は、平安時代の中期、長元2年(1029年)に源算上人が開山しますが、応仁の乱で多くの伽藍が焼けて荒廃してしまいます。江戸時代に入って復興し、特に五代将軍徳川綱吉の生母、桂昌院が手厚い寄進をしました。その桂昌院お手植えの枝垂桜が樹齢300年を超えると言われている「桂昌院桜」で、経堂のそばにあります。それ以外にも境内には500本の山桜、枝垂桜、染井吉野、彼岸桜、そしてボタン桜まであるので約1カ月間、全山桜に埋もれます。

 撮影は見事な桂昌院桜を大きく主張し、多宝塔や経堂をうまく配置するとか、視点を変え境内を見渡せる向かいの参道から桜一色の境内全体を撮るのがよいでしょう。

 大原野にはそのほか在原業平ゆかりの十輪寺の「なりひら桜」や西行が愛でたといわれる「西行桜」がある勝持寺、珍種「千眼桜」で有名な大原野神社など有名な桜がある寺社が多く、せっかくここまで来たのですからできるだけ訪ねたいものです。

 西山洛西として忘れてはならないのが筍です。ちょうど桜から新緑に掛けては筍のシーズンで、この一帯で採れるものは優れており、その中でも塚原産は日本一です。ほかの産地の物とは比べ物になりません。新林本通沿いは、作物販売ロードになっており朝掘りの筍が農家の軒先に並んでいますので是非購入してみてください。勿論高いです。
 

善峯寺へのアクセス
交通手段 JR「向日町」駅、阪急「東向日」駅より阪急バス「善峯寺」下車。

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

2014.03.16(日)
文・撮影=小林禎弘