働く女性に冷たい社会状況を逆手に取る

 会社に縛られることなく、家庭を大事にしつつ、生活からヒントを得て、自分で時間をコントロールしながら働くということは、 SNSやワークシェアリングとも親和性を持つ。ブログ、ツイッターのみならずリンクトインやフェイスブックで活発にビジネスを行うママ起業家たち。その姿は、ロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授が『ワーク・シフト』(プレジデント社)にて提唱した“未来の働き方”を先取りしているかのようでもある。すなわち近未来においては、ひとつの会社の中でしか通用しない今までの男性型ゼネラリストよりも、属人的で職人的な技術を持つハウスワイフ2.0のほうが有利となる。そして、在宅ワークの個人がウェブを媒介としてチームを組んで、大きなプロジェクトを成し遂げることも可能だという。

 ちなみに、本書とほぼ同時期にフェイスブックのCOOのシェリル・サンドバーグによる、働く女性に向けたエンパワーメント本『LEAN IN 』が出版された(日本語版は『LEAN IN  女性、仕事、リーダーへの意欲』 日本経済新聞出版社)。だが、ハーバードを主席で卒業し、米政界の超大物サマーズに若くして認められ、経営陣でビリオネアでもある彼女はあまりに雲の上の存在で、「参考にしにくい」「私には無理」との反応を示した女性もいたという。プリンストン大学教授のアン・マリー・スローターも「そもそも職場や社会がワーキングマザーをサポートしていない」とシェリルに先立って指摘している(スローターは、悪い仲間とつきあいグレてしまったティーンエイジの息子と向き合う時間を取るため、国務省の要職を涙ながらに辞任。その後「なぜ女性は全てを手に入れられないか」との論文を発表し、波紋を呼んだ)。

 このようにシェリル派にとってもスローター派にとっても、働く女性に冷たい社会状況は変わりない。だが一部のキャリア女性たちはそれを逆手に取り、いわば『LEAN IN』とは反対の作戦で“専業主婦としての新しい活動”へと乗り出す。その面目躍如の様を生き生きと描き出し、新たな意味を見出したところに、本書のユニークさと功績がある。

ハウスワイフ2.0

著・エミリー・マッチャー、訳・森嶋マリ
本体1,600円+税 文藝春秋刊

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2014.03.06(木)
撮影=Jamin Asay