ベルベル商人 VS 大阪のオバチャン

靴を脱いでのエントランス。センス抜群のアンティーク使いのインテリア

 とまぁ、スークに行きたし、されど交渉ばかりでムカツクしと思いつつ、たどり着いたのがZOUROUNI(ズルーニ)。メディナの南にあるこのレストランは、大阪出身の由美子さんの店だ。

 外観はリヤド同様、1枚の大きな扉のみ。丸い照明に「由美子」と書かれた雰囲気が、ちょっと京都・先斗町のバーのよう。中に入るとまず靴を脱いでリラックスモード。並みのリヤドでは到底かなわぬ洗練されたインテリアは、とっても落ち着く。なんでもご主人はアンティークの仕事をしているフランス人とか。さすがのセンスです。

左:中庭に屋根をつけてしつらえたレストランスペース。BGMに流れるジャズがこれまた、よい雰囲気
右:奥にはブティック・スペースもあって、やはりセンスのよろしい小物や雑貨が買える

 この店は和食だけでなく、モロッコ料理、フレンチ、イタリアンも食べられる完全予約制。モロッコ人の魚の扱いがあまりにぞんざいなので、トラックからの下ろし立てを買うため、事前の調達が必要だからという。料理からサービスまで1人で切り盛りしているので、客数も多くは取らない。テキパキと運ばれる料理はおいしいし、何より日本人的心遣いが、“交渉”に疲れた身には感涙ものだ。

 で、デザートを頂戴しながら、由美子さんと“交渉”談義に花が咲く。

落ち着く間接照明。モロッコのインテリアの中で食べる和食は、ちょっと不思議な感じ

「ベルベル方式とか言って、お互いの言い値を歩み寄らせて公平やろ言うんですわ。アンタの言い値がベラボウやろって言いたくなりますよ、ほんと。ほんま、ズルい。負けたらあきませんよ〜。観光客の人やったらまぁ、言い値の半値くらいには値切らんと」というのが、由美子さんのアドバイスだ。

 さすが、大阪のオバチャン! ベルベル人にも負けてない。オバチャンと言うにはあまりに失礼ながら、でも、異国で、しかもモロッコで店を構えるだけあって、由美子さんもタフなネゴシエイターなのだ。

 スークのネゴシエイトに疲れたらぜひ行きたい店。おいしいゴハンだけでなく、交渉術も伝授してもらえます。

【お知らせ】
大沢さんのモロッコ取材レポートは、CREA Traveller 2014年春号(3月10日発売)に掲載されます。

ズルーニ
所在地 14 Derb Jdid Riad Zitoun Kdim, Medina, Marrakech 
電話番号 +212-666-746-728
営業時間 11:00~14:00、17:00~ 
定休日 不定休
※要予約

大沢さつき(おおさわ さつき)
大好きなホテル:LAPA PALACE@リスボン
大好きなレストラン:TORRE DEL SARACINO@ソレント
感動した旅:フィリピンのパラワン島ボートダイビング、ボツワナのサファリクルーズ、ムーティ指揮カラヤン没後10周年追悼ヴェルディ「レクイエム」@ウィーン楽友協会
今行きたい場所:マチュピチュ

Column

トラベルライターの旅のデジカメ虫干しノート

大都会から秘境まで、世界中を旅してきた女性トラベルライターたちが、デジカメのメモリーの奥に眠らせたまま未公開だった小ネタをお蔵出し。地球は驚きと笑いに満ちている!

2014.02.04(火)
text & photographs:Satsuki Osawa