その一冊が心を揺るがす

 コミックスはさすがにいいラインアップを押さえている。名作コミックスをそろえた「小学館コレクション」、サクラ書店平塚ラスカ店でもオススメされていた『ワカコ酒』と『Yeah! おひとりさま』、マッハ20で動く謎の生命体の新任教師を暗殺しようとするハートフル学園ドラマ『暗殺教室』(紹介だけ読むとなんのこっちゃですが、面白いので未読の方はぜひ)、ペタペタと貼り付けたPOPも楽しい。

コミックスのオススメは、「小コレ!」(小学館コレクション)と、『ワカコ酒』と『Yeah! おひとりさま』、『暗殺教室』

 そんなコミックスでもイチオシは、入口正面に陳列している大今良時さんの『聲の形』(講談社)。差別やいじめ、残酷さやずるさを正面から描き、少年マガジン連載時から議論を巻き起こしたいわゆる「衝撃の問題作」だが、渡辺さんは、厳しいだけ、きついだけじゃない作品という。ボーイ・ミーツ・ガール的な心の動きもしっかり描かれていて、小中学生にも、親や先生の世代のどちらにもオススメとのこと。確かに、温かいだけの作品ではないが、学校帰りの小学生が町の本屋さんでこのマンガを買って心を動かした経験は大きい。子供にとって最初の社会との接点に、こんな本屋さんがあるというのは幸運なことではないだろうか。

イチオシコミックスは『聲の形』。差別やいじめを正面から描いた「衝撃の問題作」
渡辺美由希さん、イチオシ本、『彼女がその名を知らない鳥たち』とともに

【CREA WEB読者にオススメ】
 渡辺美由希さんのオススメ本は、沼田まほかるさんの『彼女がその名を知らない鳥たち』(幻冬舎文庫)。特に、主人公と同世代の30代女性のCREA WEB読者にオススメとのこと。ミステリー、中でもイヤミス(憎悪や嫌悪、凄惨な事件、ドロドロの展開で、読んでいていやーな気持ちになるミステリー)が好きという渡辺さん、中でも、沼田まほかるさんのこの作品には大きな衝撃を受けたという。徹底した心理描写、緻密なストーリーで読者には全く逃げ場がない。主人公とともに、嫌悪感を抱き、恐怖を覚え、ページをめくるたびにその展開にのめり込んでいく。

 文庫棚をどーんと大きく使って、継続的に展開中。この規模の本屋さんとしては異例の長期かつ大規模な展開だが、力を入れただけの結果も出ている。1月に文庫化した沼田まほかるさんの『ユリゴコロ』(双葉文庫)は、入口正面も使って大きく展開するとのこと。

 通勤・通学途上、もしくは自転車や電車で出かけた先、ふと立ち寄った町の本屋さんで、心を揺るがす本に出会ってしまう。そんな体験を求めて、今日も本屋さんに寄って帰るのだ。

『彼女がその名を知らない鳥たち』、どーんと展開中

ブックポート203中野島店
住所 神奈川県川崎市多摩区中野島1-9-1
営業時間 10:00~23:00 日曜日 10:00~22:00
Twitter https://twitter.com/bookport203nkn

小寺 律 (こでら りつ)
本と本屋さんと、お茶とお菓子(時々手作り)を愛する東京在住の会社員。天気がいい週末には自転車で本屋さん巡りをするのが趣味といえば趣味。読書は雑読派、好きな作家は、小川洋子さん、宮下奈都さん。

 

Column

週末の旅は本屋さん

新幹線や飛行機に乗らなくても、いとも簡単に未知のワンダーランドへと飛んでいける場所がある。それは書店。そこでは、素晴らしい知的興奮に満ちた体験があなたを待つ。さすらいの書店マニア・小寺律さんが、百花繚乱の個性を放つ注目の本屋さんへとナビゲートします!

 

2014.01.11(土)