一部屋が、寝室にも居間にも書斎にもなる
新しいコンセプト「YO! Home」

 一寝室フラット(寝室、居間、キッチン、バストイレという間取りのアパート)が、ホームシネマや書斎まで包括する5部屋の邸宅と同じ機能をもつ住空間に早変わりする、そんなコンセプトが、いま話題になっています。

サイモン・ウッドロフ氏

 一部屋を5倍にするこの「YO! Home」は、英国初の回転寿司チェーン「YO! Sushi」の創始者、サイモン・ウッドロフ氏が、7年がかりで取り組んでいる一大プロジェクト。2013年秋にロンドンで開催されたデザインの祭典「100%デザイン」で、プロトタイプが発表されたことで雑誌や新聞に取り上げられ、また2014年にはテレビの建築・インテリア番組でも紹介されて注目を集めています。

 この「YO! Home」、74平米のアパートに足を踏み入れると、なんと74平米のベッドルーム。74平米というのは、世界の大都市の中心部における一寝室フラットの平均的な広さだそうですが、これをまるまる一部屋にすると、かなり広い、ゆったりとしたスペースです。部屋の左手の壁を回転させるとアクセサリーの入る戸棚やドレッサーなど、女性に嬉しい設備が現れます。

ベッドが天井へと上がり、寝室から居間へと変貌を遂げる

 さて、この寝室の中央にあるベッドが、ボタンひとつで天井にするすると上がっていくと、ベッドの下から8人以上が座れるソファが登場。一瞬にして、ベッドルームがラウンジに生まれ変わります。

スクリーンが下りてくると、居間もベッドルームもシネマルームに

 さらにボタンひとつで、大型スクリーンが下りてきて、今度はホーム・シネマ・ルームに変貌を遂げます。

書斎のデスクの上を片付けることなく、そのままベッドを引き出せる

 部屋の片隅にあるデスクは書斎のスペース。これまたボタンひとつで、コピー機やプリンターが床からむくむくと上がってきます。この書斎の机には仕掛けがあって、ゲストが泊まりに来たときには、この机をそのまま下に引き下ろすと、壁のなかからベッドが出てくる仕組みになっています。泊まっているゲストのプライバシーを守りたいとき、オフィスに仕切りをつけたいときには、壁から引き戸式の仕切り壁と、ドアを引き出すことも可能です。

壁を開くとフル・キッチン・ユニットが、床の下から掘りごたつ式のダイニング・テーブルが現れ、広々としたダイニング・キッチンになる

 壁のなかには、フル・キッチン・ユニットが、床の下には掘りごたつ式のダイニング・テーブルが隠されていて、このスペースが広いダイニング・キッチンにも早変わりします。

 床の下には、ワインセラーのスペースがあったり、またシャワールームの床を開くと、バスタブが現れたりと、驚きに満ちたアパートです。

シャワールームの床が開くと、そこにはバスタブが

 ウッドロフ氏によると、世界の各都市の中心部に「YO! Home」を新築すると同時に、70年代・80年代に建てられたオフィスビルの改築を中心に進めていきたいとのこと。このプロトタイプはあくまでサンプルであり、その広さやインテリアはバラエティに富んだものとなるそうです。

 気になる値段については、明らかにされていませんが、100%デザインのデモンストレーションでは、「通常のアパートの5%~15%増しで、これだけのスペースが加えられるのは、価値があると思います。しかもすべて家具付きなので、通常の一寝室フラットとそう変わらないのでは」と語っていたウッドロフ氏。実際にどこに建築されて、いくらで売り出されるのか、非常に気になるところです。

<次のページ> 「YO! Home」のサイモン・ウッドロフ氏とは?

text & photographs:Kazuyo Yasuda(KRess Europe)