ネルソン・マンデラが目指した「虹の国」

 南アフリカと聞いて思い浮かべるものといえば、野生動物が行き交うサファリとワイン、豊富な天然資源などだろうか。2010年に行われたサッカーのワールドカップの記憶は新しいが、治安が悪いという印象もあるかもしれない。

 しかし、そんなネガティブなイメージは、実際にこの国を訪れれば容易にくつがえされる。アパルトヘイト(人種隔離政策)が撤廃され、初の民主的な選挙が行われてから今年で20年。ここ数年で治安も飛躍的によくなり、世界各国からの旅行者が増えている南アフリカはぜひ注目したい旅のディスティネーションだ。

週末の路上で行われていた青空ギター教室。こんなのどかな光景も、街ではよく見かける

 この国の一番の魅力は、文化の多様性だ。その背景にあるのが、さまざまな民族。ヨーロッパ系、インドやマレーシアをルーツとするアジア系、白人と非白人の血をひくカラード、さらに、肌の色は同じ褐色でも、ズールー族にサン族、ンデベレ族、スワジ族、ソト族など、多くの民族が存在する。言葉も豊富にある。現在、公用語は、英語をメインに、アフリカーンス語、ズールー語、ソト語など合計11。会社では英語を話し、家族や故郷の友人とは別の言葉で会話する、というのは、この国ではごくふつうのこと。宗教も、キリスト教やヒンズー、イスラム教とさまざまだ。

英語が通じる南アフリカ。人々も陽気で旅がしやすい

 そんな多彩な人種が集まる自国のことを、先日亡くなったネルソン・マンデラ元大統領は、「異なる色が重なり輝く虹のように、多数の人種が融和する国造りを」という願いを込めて、レインボーネーション(虹の国)と言い表した。以下は、マンデラ元大統領が、1994年の就任演説で行ったスピーチの一説。この短い言葉の中に、この国の願いと希望が込められている。

――We enter into a covenant that we shall build the society in which all South Africans, both black and white, will be able to walk tall, without any fear in their hearts, assured of their inalienable right to human dignity - a rainbow nation at peace with itself and the world.

 黒人も白人も関係なく南アフリカの全国民が一緒になって、何も恐れることなく、背筋を伸ばして歩を進めていくことのできる、決して人としての尊厳を奪われることのない社会をつくろう。我々のみならず世界が平和になるような、そんな「虹の国」を。(抄訳)

肌の色、ルーツはさまざま。この国は、まさにレインボーネーション(虹の国)

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2013.12.28(土)