「きよしこの夜」が生まれた村へ、ショートトリップ

40人ほどで満員になる小さな礼拝堂。クリスマス・イヴには毎年ミサが開かれます

 クリスマスに欠かせない歌といえば「きよしこの夜」。世界中で歌い継がれている名曲ですよね。じつはこの曲、ザルツブルク郊外の小さな村で生まれたものだって、ご存じでしたか?

 「きよしこの夜」が作曲されたのは、ザルツブルクから北へ20kmほど、ドイツとの国境にほど近いオーベルンドルフという村でした。1818年、クリスマスが近づいたある日、村にある聖ニコラウス教会のオルガンが故障してしまいました。このままではミサでクリスマスキャロルを歌うことができません。困った神父は、当時村の教師をしていたグル―バーという男に、急きょオルガンなしで伴奏できる曲を作ってもらえるよう頼んだそうです。そうして生まれたのが「きよしこの夜」。その年のイヴの夜、グル―バーのギター伴奏で合唱されたのが、世界で最も有名なクリスマスキャロルのはじまりでした。

左:当時の聖ニコラウス教会は洪水被害で損壊したため、その跡に現在の「きよしこの夜教会」が建設されたそうです
右:礼拝堂の中にあるステンドグラスには、作曲をしたグル―バーの姿も

 実際に訪れたオーベルンドルフの礼拝堂は、思った以上に小さく、質素なものでした。大人が40人ほど入ればぎゅうぎゅうになってしまうほどの広さに、こぢんまりした祭壇。クリスマスの飾りつけはといえば、小さなツリーとキャンドルだけ。それでもなぜでしょう。礼拝堂全体にあたたかく、親密な空気が満ちていて、不思議な安心感に包まれます。

 礼拝堂には大きなステンドグラスがふたつ、向き合うようにしつらえてあります。ひとつはクリスマスキャロルの作曲を頼み、自ら「きよしこの夜」の作詞をてがけた聖ニコラウス教会のモール神父。もうひとりがグル―バーです。偶然の出来事が生んだ名曲は、今でも毎年この礼拝堂で歌い継がれ、ミサが開かれるクリスマス・イヴには、世界中から人々が集まってくるとか。きっとすごくあたたかいミサなのでしょうね。いつの日かここでイヴの夜を過ごしてみたいです! ミサがなくても礼拝堂の内部は自由に見学できますので、ぜひ足を運んでみてくださいね。

きよしこの夜教会
所在地 Stille-Nacht-Platz 7 A-5110 Oberndorf bei Salzburg
電話番号 +43-627-24422
URL http://www.stillenacht.at/
開場時間 8:00~18:00

きよしこの夜にちなんだ切手とスタンプ。博物館で買って投函できます

 そしてそして、お待ちかねのお土産情報! 今回は女子なら胸キュンのスゴイお土産を発見しましたよ~。きよしこの夜教会から歩いてすぐの場所にある「きよしこの夜郷土博物館」。オーベルンドルフの街の歴史などイロイロ展示してあって興味深いのですが、注目は博物館1階にあるミュージアムショップです。小さなお店ではありますが、きよしこの夜の楽譜やCDなどが豊富に揃います。

 見逃し厳禁なのは、きよしこの夜にちなんだポストカードや封筒類。なんとこの博物館では、クリスマスシーズン限定で臨時郵便局が開設されます。ここで買ったポストカードや封書にその場で手紙を書けば、きよしこの夜にちなんだ切手を貼り、さらに礼拝堂をモチーフにした消印スタンプを押して世界中に発送してくれるのです。くーッ! なんてニクイ演出なんでしょう。日本にいる家族や友人にサプライズでクリスマスグリーティングを送るのもすてきですよね。絶対実践してみてくださいね!

きよしこの夜郷土博物館
所在地 Stille Nacht-Platz 2, 5110 Oberndorf bei Salzburg
電話番号 +43-627-24422
URL http://www.stillenacht-oberndorf.at/
開場時間 9:00~16:00
※クリスマスイヴまでの約4週間は18:00まで

オーストリア航空
URL http://www.austrian.com/

オーストリア政府観光局
URL http://www.austria.info/jp

小林百合子(こばやし ゆりこ)
フリーランス編集者。出版社勤務を経て独立。旅やアウトドア、自然にまつわる雑誌・書籍の編集を手がける。女性向け山岳雑誌『Hütte』(山と溪谷社)の編集を務め、女性らしい視点で登山の楽しみ方を提案している。著書に『山と山小屋』(平凡社)がある。

田部井朋見(たべい ともみ)
写真家。大学中退後、ファッション関係の出版社に入社。退社後、フリーランス。ファッションやレコード、CDジャケット、写真集などの仕事に携わり、海外取材も、60カ国を超える。特に、オーストリアは50回以上滞在。文と写真を手がけた著書に『ウィーンのカフェハウス』(東京書籍)がある。オーストリアのように、水道水の美味しい国が大好き。

Column

冬のオーストリア クリスマスをめぐる浪漫旅行

きらびやかなイルミネーションが街を彩り、一年で最もロマンティックな季節を迎えるヨーロッパ。なかでも、クリスマスマーケットの文化が根付いたオーストリアはとてもロマンティック。乙女心をくすぐるウィーン、ザルツブルク、インスブルック、3つの街をご案内します!

2013.12.20(金)
小林百合子=取材・文
田部井朋見=写真