新作『ばしゃ馬さんとビッグマウス』前に考えていたこと

――映画監督でやっていこうと思った時期は、そのときですか?

 どうなのかな? 子供の頃から「映画監督になる!」って言ってはいたけど、自分の頭の中でなれないことも、どこかで想定していたんですよね。だからこそ、照明の仕事を続けていたわけだし……。それに、ここ3年ぐらいは映画で喰っていかなくてもいいかなとも思ってました。それは夢を叶えちゃったから言えることなんですけど、前作の『さんかく』から3年、いろいろ脚本を書きながらも、その企画が次々に流れてしまうのを見ていたからですね。『ばしゃ馬さんとビッグマウス』の企画が流れてしまったら、本当に辞めて錦鯉の養殖か、長距離トラックの運転手をやろうと思っていましたし。

~次回更新分では、構想7年の最新監督作『麦子さんと』を中心に語っていただきます~

吉田恵輔(よしだ けいすけ)
1975年5月5日生まれ。埼玉県出身。東京ビジュアルアーツ在学中から自主映画を制作すると同時に、『悪夢探偵』など塚本晋也監督作で照明を担当。2006年に撮った自主映画『なま夏』が「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」ファンタスティック・オフシアター・コンペティション部門でグランプリを受賞。そのほかの監督作に、『純喫茶磯辺』『さんかく』などがある。

『麦子さんと』
声優を目指す麦子(堀北真希)が、兄・憲男(松田龍平)と暮らすところに、かつて二人を捨てた母・彩子(余貴美子)が戻ってくるが、間もなく病のために、帰らぬ人に。納骨のため母の故郷を訪れた麦子は、そこで自分の知らない母の一面を垣間見ることになる。
www.mugiko.jp
(C) 『麦子さんと』製作委員会
12月21日(土)、全国ロードショー

くれい響 (くれい ひびき)
1971年東京都出身。映画評論家。幼少時代から映画館に通い、大学在学中にクイズ番組「カルトQ」(B級映画の回)で優勝。その後、バラエティ番組制作を経て、「映画秘宝」(洋泉社)編集部員からフリーに。映画誌・情報誌のほか、劇場プログラムなどにも寄稿。

Column

厳選「いい男」大図鑑

 映画や舞台、ドラマ、CMなどで活躍する「いい男」たちに、映画評論家のくれい響さんが直撃インタビュー。デビューのきっかけから、最新作についてのエピソードまで、ぐっと迫ります。

2013.12.14(土)
text:Hibiki Kurei
photographs:Mami Yamada