グスターボ・ドゥダメルとの運命の出会い

ユジャ・ワンは、1987年北京生まれ。6歳からピアノを学び始め、北京の中央音楽学院を経て、フィラデルフィアに移りカーティス音楽院を卒業。シカゴ響、サンクトペテルブルク・フィルなど一流オケへの客演は多数。(C) Leila Mendez / DG

 現在26歳。世界中の名指揮者&オーケストラと共演を重ねてきたユジャにとって、自分とあまり年の変わらない若い指揮者と共演することは大きな刺激だったはず。

 ベネズエラ出身の32歳のマエストロ、グスターボ・ドゥダメルもごく若い頃から天才指揮者として世界に名を轟かせてきた人物だけど、ジェネレーションや早熟さだけでなく、彼らにはもっと大きな共通点がある。それは、爆発するような「生命力」と「ワイルドさ」よ。

 彼らがカラカスでライヴ録音した『ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番』の壮大なスケール感は、しなやかな野生動物のようなビューティフルな生命力を放っている。ラフマニノフのコンチェルトはロマンティックで感傷的……という人もいるけれど、この演奏を聴いたら印象が大きく変わるはず。

 ロシアの大地のようでもあり、アフリカのサバンナのようでもある、大自然をイメージせずにはいられないオーケストラ。そこに天翔けるペガサスかシマウマかキリンの大群のようなピアノが加わって、とても豊かで広大無辺なシネマスコープの音楽が完成しているのです。ラフマニノフの最終楽章の、太陽と溶け合う地平線のような永遠のサウンドは、過去の録音のすべてが古臭く感じてしまうほどのインパクト。聴衆の反応も熱狂的です。

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2013.12.17(火)