越中とやまの食ロードを巡る旅

越中とやまの食ロードを巡る旅

昆布で〆る。
北前船が運んできた「食」文化

越中とやまの「食」を巡る

 寒くなると、富山はおいしくなる。寒ブリ、ズワイガニ、かぶら寿し。でも、今はまだ秋。冬の到来を待ちきれなくなった女性二人組は東京を発って、ひと足早く富山へと向かった。そこで出会った富山ならではの「自然の恵み」と「大地の実り」。越中とやまの食ロードを辿る旅が始まる。

» 2015年春、北陸新幹線開業富山を味わう、富山に酔う
» [握(にぎる)] 天然の生け簀富山湾から届く極上のネタを堪能
» [獲(とる)] 氷見の寒ブリがおいしい理由は定置網漁法にあり
» [栽(うえる)] 庄川が育む大地の実りが砺波平野を彩る
» [和(あえる)] 砺波のソウルフード。ご飯がすすむ「よごし」の素朴さ
» [漬(つける)]南砺で見直した麹のチカラ。伝統の発酵食で身体をリセット
» まだまだあります。とやまの「食」

今回のテーマは「〆(しめる)」

高岡「塩谷昆布店」の店先。店頭ではとろろ昆布を削り出す作業も見学できる

「これ、おいしい」。いきなり相方が声をあげた。「それはヒラメの昆布〆。半日ほど昆布に挟んでおいたものです。普通の家庭でも、刺し身が余ったら自分のところで昆布〆を作りますよ。富山の人は昆布が大好き。こっちに来たばかりのころはびっくりしましたよ。おにぎりも海苔ではなく、とろろ昆布で巻くんですからね」とご主人は笑う。そういえば前回、富山を旅したときに高岡で「高岡昆布飯」というのを見かけた。市内の飲食店で昆布を使った創作料理を提供しようというのだ。2013年には「昆布スイーツ」まで登場したという。「明日は氷見(ひみ)の魚市場で競りを見るんでしょ。それなら今夜は高岡で一泊して、昆布三昧というのはどう?」と友人。というわけで、次は高岡へ向かった。

「一世帯当たりの昆布購入額は、富山が53年間連続第1位なんですよ」と居酒屋のカウンターで胸を張るのは、地元で昔から昆布・乾物を扱ってきた「室屋(むろや)」の室谷博久会長。たまたまお店で隣り合わせたのが縁で、昆布の話を聞かせてもらった。「魚の切り身を昆布で〆ると2、3日はもちますからね。初めは保存という意味だったんでしょうね。でも、〆ることで味もよくなるし、最近では山菜の昆布〆も人気ですよ」。市内の昆布専門店をのぞいてみると、その種類の多さに圧倒される。「うちでも、昆布の表面を削った黒とろろだけで10種類くらい出していますよ。産地も、利尻あり羅ら臼うすあり根室あり。東京あたりだと、お店で見かけるのは日高昆布くらいじゃないかな」。ダシはもちろん、昆布〆の刺し身、とろろ昆布のおにぎり、昆布を巻いたかまぼこ、おしゃぶり昆布、昆布巻……富山の家庭では昆布は必需品というわけだ。

左:<室屋>黒とろろ、白とろろ、おしゃぶり昆布……そのバリエーションの多さに驚き
右:<北前船廻船問屋「森家」>富山市東岩瀬。岩瀬大通りは北前船や北洋漁業で財をなした旧家が軒を並べる海商の町だった

「昆布を食べる習慣は、19世紀、北前船が運んできたものなんですよ」と室谷会長は説明してくれた。大阪の木綿や越中・越後の米を北海道に運び、北海道からはニシンや昆布を持って来る。北前船を所有する富山の廻船問屋は、北陸と北海道、大阪を結ぶ交易で莫大な富を築いたそうだ。確かに、富山市東岩瀬に今も残る北前船廻船問屋「森家」の屋敷を見ると、その羽振りの良さがうかがえる。「倒幕のための資金集めに奔走していた薩摩藩は、北前船の昆布に目をつけて、琉球を通じて中国と密貿易をやっていたんですよ。その仲介をしたのが薩摩藩に出入りしていた富山の売薬商人。彼らはその見返りに中国から貴重な漢方薬の原材料を手に入れていたそうなんです」。へえー、海を越えた昆布ロードがあったんだ。昆布〆のお刺し身と地元の銘酒「勝駒」を口に運びながら、室谷会長の昆布余話に耳を傾けているうちに、高岡の夜は更けていった。

塩谷昆布店
所在地 高岡市定塚町1-1200
電話番号 0766-22-3979

室屋
所在地 高岡市二塚199-19 高岡フードパーク内
電話番号 0766-63-4668

国指定重要文化財 北前船廻船問屋「森家」
所在地 富山市東岩瀬町108
電話番号 076-437-8960

<この記事の掲載号>

CREA Traveller 2014年冬号

特集 泣かせるプラハ
Unforgettable Praha

定価980円(税込)

2013.12.10(火)

志水 隆=写真
編集部=文
関 幸子=プロデュース
富山県・富山市・氷見市・高岡市・砺波市・南砺市=協力

※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

CREA Traveller 2014年冬号

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