世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第7回は、大沢さつきさんがイタリアのシチリア島で拾った熱いエピソード。

エトナはいまも燃えているか?

リゾート、タオルミーナから見たエトナ山。夕陽を受けて茜に染まっているのは雲ではなく噴煙だ

 シチリアのシンボルといえばエトナ山。今年世界遺産登録されたエトナは、同時に登録された富士山とよく似ている。標高かたや約3343m、こなた約3776m。美しい姿形も、古い歴史をもつことも一緒。霊峰富士には神が宿るが、エトナもギリシアの鍛冶神ヘーパイストスの住まいだ。もっともこの神さま醜男で、美人妻アフロディーテに浮気はされるは、後世の絵画に、妻の密通現場を目撃するシーンを描かれるはで、ちょっと哀しい役回りの神さまなのだが……。

エトナ山の側火口のシルベストリ火口。この辺り、いまはホテルやレストランが立ち並ぶ

 そしていずれも活火山。富士山もおとなしそうに見えて、内に大量のマグマを抱えてる。もっともエトナのほうはさすがイタリアの火山、2013年10月にも真っ赤な溶岩を吹き上げるけっこうな噴火を記録しているし、年に何度も小さな噴火を繰り返す賑やかさだ。彼の山から噴煙がたなびく姿を見るのも、そう珍しいことじゃない。だからシチリアっ子もエトナの噴火には慣れっこ。物好きシチリアンもいて、小さな噴火の翌日、8km歩いて噴火の後を見に行ったという輩もいなくはないのだ。

標高3000m付近に立てられた看板は、10年前の噴火の写真

 もっともそのミネラル豊かな土壌から生まれるワインや野菜は格別で、エトナの恵みに山への愛着ひとしおの感じは、ナポリやソレントっ子にとってのヴェスヴィオ火山と同じだ。

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2013.11.12(火)
text & photographs:Satsuki Osawa