日本画の命とも言える「筆線」で達成した西洋的なリアリズム

「驟雨一過」 昭和10(1935)年 京都市美術館蔵 (一部:「大きな画像を見る」で全体をご覧いただけます)
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 同時代の横山大観や菱田春草が、西洋絵画の空気遠近法(遠くのものほどかすんで見えるように表現する表現法)を採り入れようと、輪郭線を用いずに色面をぼかしてモチーフを描き出す「朦朧体」を試みたのに対して、栖鳳は日本画の命とも言える「筆線」を否定せずに、実物の克明な観察で形態を正確に把握し、それをずば抜けた筆技によって写し取ることで、西洋的なリアリズムを達成していった。

「城外風薫」 昭和5(1930)年 山種美術館蔵 (展示期間:東京会場は9/3-9/23、京都会場は半期出品)

 さて10月5日からは、栖鳳と違う形で新時代の日本画を模索した横山大観を紹介する「横山大観展 良き師、良き友」が、横浜美術館で開催される(~11月24日)。栖鳳と大観という同時代を生きた2人の画家が、それぞれどのように新しい時代の、新しい日本画を作り上げようとしたのか、互いを見比べることでより深くその作品を理解できる、よい機会となるはずだ。

竹内栖鳳展 ―近代日本画の巨人―
URL  seiho2013.jp
会場 東京国立近代美術館
会期 2013年9月3日(火)~10月14日(月・祝)
(※期間中展示替えあり。10月22日~12月1日、京都市美術館に巡回)
休館日 月曜日(ただし10月14日は開館)
入館料 一般1300円ほか
問い合わせ先 03-5777-8600(ハローダイヤル)

橋本麻里

橋本麻里 (はしもと まり)
日本美術を主な領域とするライター、エディター。明治学院大学非常勤講師(日本美術史)。近著に幻冬舎新書『日本の国宝100』。共著に『恋する春画』(とんぼの本、新潮社)。

Column

橋本麻里の「この美術展を見逃すな!」

古今東西の仏像、茶道具から、油絵、写真、マンガまで。ライターの橋本麻里さんが女子的目線で選んだ必見の美術展を愛情いっぱいで紹介します。 「なるほど、そういうことだったのか!」「面白い!」と行きたくなること請け合いです。

2013.09.28(土)