紅葉を見に、京都へ行こう! 京都在住の写真家・小林禎弘さんが、長年の撮影の経験を踏まえて紅葉の名所を紹介します。京都の人ならではの行き届いた観光案内、撮影指南としてもお楽しみいただけます。

【第1位】嵐山

醍醐天皇も行なったという川遊びが現在のような観光屋形船になったのは明治時代。奥の屋形船はおでんなどの食べ物を販売する船。その奥に、保津川下りの船が見えている。

 嵐山は平安時代の貴族の別荘地でした。「源氏物語」の明石の君も、このあたりに住まいを構えたとされています。

 京都の紅葉は、建造物と自然を融合させ、計画的に楓や桜等の樹木を配して、為政者たちが思い描いていた美意識を完成させたものが一般的です。嵐山は、そこに天然自然の紅葉も加わっており、別格の郊外型リゾート地とされてきたわけです。

 嵐山のシンボル渡月橋を下流左岸(東側)に立って手前に紅葉の楓を入れて見ると、その後ろに色とりどりに紅葉した嵐山を眺めることが出来ます。左岸を溯ると亀山公園への登り口より上流に、大きな岩と川へ張り出した紅葉の巨木があります。ここが私の好きな場所です。フレームを決め待っていると、嵐山で欠かせないアイテムである屋形船がやってきます。対岸の「星のや京都」あたりからも同じシチュエーションで撮影できますが、こちらからは背景に嵐山を大きく入れることができます。

 そのほか、亀山から見下ろした嵐峡と向こうに迫った嵐山、天竜寺の夢窓国師の庭、大河内山荘、竹林の道、とご自分の足で一日歩かれることをお勧めしますが、人力車もあります。

 嵐山は先日の洪水で大きな被害を受けました。しかし、料亭「京都吉兆嵐山本店」はすでに営業を再開されていますし、中の島の料理屋さんも10月初旬には再開されるようです。人気の高い嵯峨野トロッコ列車も運行しており、屋形船も10月1日から再開されます。また、毎年11月の第2日曜日には、嵐山もみじ祭が行なわれます。

 1000年以上にわたって愛され続けてきた嵐山の秋の風景を、ぜひ堪能してください。

永観堂の紅葉スポット
交通手段 JR嵯峨野線「嵯峨嵐山」駅下車。京福電鉄嵐山本線「嵐山」駅下車。阪急嵐山線「嵐山」下車

小林禎弘
フォトグラファー。京都市生まれの京都市育ち。同志社大学を卒業後3年間の公務員を経て撮影の世界へ。雑誌、書籍、広告を舞台として、京都を中心に西日本を幅広くカバー。「撮影歴30年ですが、それくらいでは京都の事はまだまだわかりまへん」。

2013.09.30(月)