「Soup Stock Tokyo」を主宰する遠山正道氏が2012年、開催して単行本にもなった大人気講座「おいしい教室」が、今度は東京・丸の内を舞台に、帰ってきました。今年も毎回、多彩なゲストをお迎えして、テーマに沿ったお弁当を持ちよります。今回はどんなお弁当が登場するのでしょうか!? この連載では、講座で行われたゲストとの対談、そしてゲストや参加者が選んだステキなお弁当を紹介します。

第1回テーマ 白ワインに合うお弁当
ゲスト:桑村 綾(「紫野和久傳」代表取締役社長)

桑村 綾(くわむら あや)
「紫野和久傳」代表取締役社長。1940年、京都府宮津市に生まれ、1964年、丹後の料理旅館「和久傳」に嫁ぐ。業績不振に陥った旅館を立て直すため、1982年、京都の高台寺に料亭「和久傳」を開業。つづいて料亭「室町和久傳」「京都和久傳」、2003年にはお惣菜・お弁当などを直販する「紫野和久傳」を設立。2008年には創業の地であった丹後に、原材料から商品までを一貫して生産する食品工房をつくるなど、食を通じて常に新たなチャレンジを続けている。

ゲストの桑村さん(右)と

遠山:メディアにほとんどお出にならないのに、今回はゲストでご登場いただき、ありがとうございます。

桑村:私がメディアに出ないのは、そんなにお誘いもありませんし、あったとしても、イメージと本人の落差がありすぎたら申し訳ないからです。それでも、90歳くらいになったら、メディアに出るのもいいかなと思っているんですけれども。

遠山:桑村さんは20代で料理旅館に嫁いで、一代で料亭「和久傳」をつくられた方です。ですから、いま独身のみなさんも、これから結婚して桑村さんのような人生を過ごすことになるかもしれませんよ。

桑村:私は24歳のときに、当時は京都の北のほう、丹後にあった料理旅館「和久傳」に嫁いだんです。嫁いで来年で50年。私も50歳くらいまでは、もういつでも何かあったら辞めたいと思っていました。でもその都度、経営的な危機などがあって、それを乗り越えていくうちに仕事が面白くなってしまったんです。

遠山:それなら、私の仕事もこれから面白くなりますか?

桑村:もちろん! でも窮地に追い込まれないといけませんよ。そうすると新しい発想が出てくるんです。

遠山:窮地に追い込まれることならたくさんあるので、大丈夫だと思います(笑)。桑村さんが嫁がれた旅館は当初は隆盛だったんですが、だんだん経営がうまくいかなくなってしまった……。

桑村:丹後の繊維産業のおかげで成り立っていたものですから、その衰退とともに経営は苦しくなりました。それでこのままでは和久傳の名が守れないと思い、10年くらい考えた末、1982年に思い切って京都の高台寺に料亭「和久傳」として出ました。ちょうど42歳のときです。

遠山:すでに老舗の料亭がたくさんある京都に飛び込んでいくというのは、すごい決断です。

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2013.08.20(火)
text:Rika kuwahara
photographs:MIki Fukano / Nanae Suzuki