役者としての転機になったアプローチ法

――今回、映画で初主演を務められたことで、俳優としての気持ちに変化はありましたか?

 主役はいちばん長い時間、映画には出ているわけですし、もちろん現場にいる時間もいちばん長い。だから、今回はじっくりお芝居ができたんです。それがすごく楽しかったですね。それに主演ということで、今までやってきたお芝居の仕方とは違うだろうな、とこれまでとは違うアプローチのお芝居をしたんです。今までは自分と役の共通点を見つけて、自分を主体にお芝居をすることが多かったんです。でも、今回は自分のなかで、一から健太郎の人生を作ってみて、それに体を貸すというような感じでした。さっきも言ったように僕との共通点はないですし、自分の感情はほとんど入っていないですね。

――そういうことが逆に、苦痛やプレッシャーなどにならなかったんでしょうか?

 確かに、最初はそういったお芝居の仕方で、自分自身が楽しめるのか不安だったけど、でも、非常に楽しめました。特に前半の健太郎、たとえばお見合いのシーンとか、すごい怒っているんだけどボソボソと言っているところの演技とか、前だったら、彼が自分自身を解放する後半パートとかが楽しかったと思うんですよ。この変化は、自分にとって新たな発見でした。そんなこともあって、すごく大切な作品になったと思います。

――本作の撮影は2012年でしたが、ミュージシャンとしても、どこか殻を破られたような気がします。それに関してはどうお考えですか?

 そうですね。去年1年間は自分の殻を破りたい、といろんな活動をしました。どの仕事に関しても、自分の守備範囲が固まってきてしまっていたし、いつの間にか“星野源らしさ”みたいなものが常につきまとってくるような感じがあって、それを壊したかったです。だから去年は「今までとは違う音楽、今までとは違うお芝居をやっていこう」と思ったんです。自分を壊していくという感じで。でも、1年間いろんなことをやったおかげで、今は割とどうでも良くなったというか、どこか力が抜けていったような気がしますね。

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2013.06.07(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Asami Enomoto