半年に一度の発表のたびに大きく報道され、お祭り騒ぎになる芥川賞・直木賞。その成り立ちから知られざるエピソードや文学史に残る名言に徹底的に迫ります! 今回は、副賞賞金の変遷などのおもしろコラムを紹介。

» 第1回 芥川賞・直木賞の成り立ち
» 第2回 文学史に残る名言&エピソード

正賞は懐中時計、副賞は500円から100万円に!

 そもそも、菊池寛は受賞者には賞金のみを考えていたが、作家から文藝春秋社の幹部に転じた盟友、佐佐木茂索の「記念に残る品物を正賞にして賞金は副賞にすべき」という進言により、正賞・懐中時計、副賞・賞金の形となった。懐中時計は、戦前はその都度見つくろっていたため、ロンジン、オメガ、セイコー……と、ブランドはバラバラ。太平洋戦争直前には、輸入時計の減少のため、陶芸家・河井寛次郎の壺などの記念品が渡されたときもあった(戦後改めて時計も贈呈)。現在は「銀座和光」謹製のもので、裏には賞の名前や贈呈式の日付、受賞者名が彫られている。

 また、当初の副賞は500円で、佐佐木によると「本当に精進する気の人なら相当期間食って書いていられる」額であった。第1回直木賞受賞の川口松太郎は、一流レストランで仲間に大盤振る舞いしたが、使い切れず、200円ほど余ってしまったとか。

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2013.05.06(月)
text:Yoshiko Usui
photographs:Mami Yamada / Bungeishunju

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