現在のベースとなった『ラストサムライ』の現場

――次に受けられたオーディションは、映画初出演となった『ラストサムライ』(2003年)。完全なハリウッド大作ですよね。

 このときのオーディションも、よく覚えていますね。またか、という感じはあったし、わざわざ何度も東京に行かなきゃいけない。こちとら野球の試合があるのに……という感じで(笑)。だから、やっぱりグズったんですよ。ハリウッドもトム・クルーズも知らなかったし、知らない外人のおじさんがいて……それが監督(エドワード・ズウィック)だったんですけど。オーディションで監督から「何でこの仕事やっているの?」と言われれば、「やらされているだけ。僕は野球選手になりたい」と素直に言っていましたし、「君はイチローになりたいの?」と聞かれれば「なりたい!」と言っていました。そうしたら、いつの間にか決まっていたという感じです。

――トム・クルーズをはじめ、渡辺謙さんや真田広之さんが一緒にいる現場ではどんなことを感じられたんでしょうか?

 これは今になって思うことなんですけど、トムさんは本当のプロでしたね。とにかく常に他の人のことを考えていて、最後まで現場にいるのはトムさんでした。それでいて自分を疎かにしていない。どれだけの余裕があったら、あそこまでできるのかと思いますよね。あと、渡辺謙さんや真田広之さんも毎日現場に来ているし、たくさん意見も出していました。自分の国の映画を外国の方が撮るということで、ある意味、日本人として闘っているんだと思いました。そういった姿を見ることで、幼いながらもカッコいいなぁと思っていました。あのときのみなさんの“現場の居方”みたいなものは、今の自分のベースになっていると思いますね。

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2013.02.22(金)
text:Hibiki Kurei