佐々木俊尚 1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社、アスキーを経て、フリージャーナリストとして活躍。公式サイトでメールマガジン配信中。著書に『本当に使えるウェブサイトのすごい仕組み』

【KEY WORD:LINE】

 通信キャリア関係なく、無料通話やメッセージのやりとりができるグループコミュニケーションアプリ。運営元は「NAVER」を運営するNHN Japan株式会社。「デジタル・コンテンツ・オブ・ジ・イヤー'11/第17回AMDアワード」で優秀賞を受賞し、2012年7月にKDDIとの業務提携を発表。

国産アプリは繊細な気遣いで世界的ブームに

 スマートフォンアプリ「LINE」が大きな注目を集めています。

 ユーザーは国内で2000万人。海外では4500万人もの人が利用しています。1日にやりとりされるメッセージは10億に上るとか。スタートから1年で驚きの大躍進です!

 このアプリを作ったのはNHNという韓国のネット企業。ただし開発の中心は日本法人なので、久しぶりに世界でヒットしている国産インターネットサービスと言えるでしょう。

 LINEの人気の秘密を端的に言えば、「いまの感情や気分をすごく簡単に相手に伝えることができる」ということに尽きます。その中心になっているのが、スタンプ機能。スタンプというのは、アイコンや顔文字をさらに大きくした画像で、メッセージとして送信できます。文章に添付するだけでなく、スタンプ単体で送ることで、ちょっとした感情をワンクリックで送信できるのです。

 LINEはこういうちょっとした手間を省く細やかさが非常によくできています。「ログイン」という概念もなく、通常のウェブサービスだとフェイスブックと連携したりIDとパスワードを入力したりと面倒な作業が多いのですが、LINEではそうした面倒抜きで使えます。

 これはガラケーに近い感覚とも言えるでしょう。最近はガラケーが廃れてきてスマートフォンに移行し、その結果、携帯電話の操作感覚はパソコンに近くなりました。情報収集など通信以外の使い方も多いです。

 でもガラケーにあった温もりや、人と人が直接つながってる感じがちょっと薄れてしまったのでは? と寂しさを感じている人もいるのではないでしょうか。情報が中心のスマホに対して、ガラケーは「つながり」が中心の文化であったと言えます。

 LINEはスマホの世界に、ガラケー的な文化をうまく持ち込みました。「つながり」を軸とした人々のコミュニケーションを演出することに成功したのですね。その意味でこのアプリは今後も成長が見込まれるのではないかと私は考えています。

2012.08.07(火)

CREA 2012年9月号
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