わりに見えにくい化粧品の進化をどう見極める?

a 肌本来のエネルギーレベルを上げる新テクノロジーの搭載によって、コラーゲン構築力を2倍に高めることに成功した美容液。 パーフェクショニスト[CP+R] 30ml ¥9975/エスティ ローダー

b 1985年のデビュー以来、ハリのある肌をもたらしてきたエイジングケア美容液。再生、保護など肌の5大機能をサポートする20種の植物も配合。 ダブル セーラム 30ml ¥11550/クラランス

c わずかな刺激にも反応してしまう乾燥性変調肌のために進化。モイスチャーバリアの修復に働きかけることで、うるおいを逃がさないみずみずしい肌へ導いてくれる。 モイスチャーサージ インテンス 29g ¥4725/クリニーク ラボラトリーズ

 “パワーアップしました”と化粧品がリニューアルするたびに思う。化粧品の進化ほど曖昧なものはないかもしれないと。化粧品のリニューアルにはちょっとした裏事情があり、中には手放しでは喜べない“改良”もあったりするからだ。前作にクレームがあったからリニューアル、売れなくなったからリニューアル……化粧品に限らずそういうケースはあるものだが、本当に効果が倍増しているケースとの見分けがつかないのが化粧品。一体どこで見分けよう。

 そこであらためて見直したいのが、進化するロングセラー。同じロングセラーでも、中身をあえて変えないものと、数年ごとに中身を変えていくものがあって、この後者のロングセラーこそ狙い目、と言いたいのだ。

 正直言って、旧作の名前に“EX”をくっつけただけの最初の進化は、コスメ界にあふれている。しかし何代も何代も進化させ続ける製品は別格。単なるマイナーチェンジではない、それは時代とともに本気で効果を高めていこうという覚悟の表れ。肌自体を確実に進化させていこうという使命感の表れなのだ。言ってみれば、信じられないほどご飯が美味しく炊ける炊飯器の進化みたいに。

 たとえばクリニークの“モイスチャーサージ”。初代は1990年に日本発売、2代目が2002年、その後3代目2008年、そして今年、4代目のデビューとなった。初代発売の時は、保湿クリームなのに“ジェル状”という、当時として画期的な提案が大変な話題となり、市場は気がつけば、“ジェル保湿”が一大トレンドとなっていた。つまり、他社が次々と追随してくるのに、“本家”はまったくひるむことなく、自らのペースで進化し続けてきたと言っていい。今回の4代目は、特に乾きやすい肌へのバリア強化にめざましい力を発揮する。だから前作の“EX”も健在。むやみに前作を否定しないのも、進化するロングセラーの面目躍如だ。

 そして形として明快な進化を見せてきたのは、今年“7代目”を数えるクラランスのダブル セーラム。2剤を混ぜる処方は他の追随を許さない。最初はボトルが2本だったのが、やがて1本になり、そして今回きわめて難しいとされる、“水性”と“油性”をボトルから出す瞬間に混合させることに成功している。同じスタイルにこだわってきたからこそ、成し遂げられたこと。たるみに確かな効果をもたらし、目に見えるハリをつくるパワーは、2剤混合ならでは。今回、水と油を合わせた未体験のテクスチャーには必ずハマる。それこそが進化するロングセラーたるゆえんなのだ。

 さて、飽くなき探求心で同じ美容液を何代も進化させ続けるパイオニアである王者は、ご存知、“ナイトリペア”を世に送り出したエスティローダー。ここは他の美容液もそれぞれの形で進化させ続けていて、肌進化への使命感もハンパじゃない。今年、ベストコスメにも数々輝いたパーフェクショニスト「CP+R」も、パーフェクショニストファミリーの“進化計画”の中の目玉。初代セラムから、CP+AWリフト、そして今回のCP+Rと、ここならではのテクノロジーを次々塗りかえ、あの手この手で肌をパワーアップさせる。今回は“液体の包帯”のような働きで、凹凸小ジワを目だたなくする。ともかくリニューアルの定義を変えるほど果敢な前進を毎回見せてきたのだ。

 こんなふうに一品にこだわり続けるブランドは信じられる。そして本気のリニューアルは絶対買いなのだ。

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2012.12.24(月)

CREA 2013年1月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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